高い再現性を持つハイスペック光造形レジン!原型にオススメな『TH-HR』の紹介!

モデラー

  • 柚P

 

こんにちは、柚Pです。

この記事ではRESIONEから販売されている「TH-HR」という光造形レジンを紹介していきます。

TH-HR

RESIONEの「TH-HR」は、高解像度高再現性低収縮不透明性、といった特徴を持った光造形プリンター用のレジンです。出力品の洗浄にはアルコールを使用します。

高解像度、低収縮、と聞けば、同社のM58やM68をイメージされる方もいると思いますが、正直、硬化後は似たような物性に近いと感じました。

このレジンがM58やM68と大きく異なっている特徴は、一般的なレジンより光の透過深度が低くしてあるため、積層ピッチを0.02mm程度に下げても印刷太りが起こりにくくモデルの再現性が維持しやすい性質をもっています。

なぜ光の透過深度が低いのか?

印刷物を正確に出力するためには、LCDでマスクされた形状のみを正しく硬化させる必要があります。

このとき、一般的に使われているような光を透過しやすいレジンの場合、LCDでマスクされた光がマスク外へ広がりやすく、その結果として造形太りが起こってしまいモデルの再現性が悪くなってしまいます。

TH-HRの場合は、はじめから光の透過深度を低くして作られているため、LCDでマスクされた光がマスク外へ逃げにくいため、再現性の高いモデルが出力できるというわけです。

ただ、光の透過深度を低くすることで起こるデメリットも大きいです。

詳しいことは後述しますが、光を透過しにくい特性のため、プラットフォームへの定着が悪くなったりします。ですので積層ピッチを0.05mmでいつも通りに印刷したい場合は、一般的なレジン(M58やM68など)のほうがバランスが良いため扱いやすいです。

使用上の注意点

TH-HRのレジンでは、印刷ピッチを細かく設定でき高いモデルの再現性を得られる反面、3Dプリンターの印刷設定はかなりシビアに調整しないと正しく印刷されません。そういう意味ではTH-HRは上級者向けのレジンと言えるでしょう。

resioneの公式サイトではマニュアル(英語)が用意されているため、こちらも参考にしつつ設定を出してみましょう。

3Dプリンターの相性問題

プラットフォームもしくはレジンバットに、スプリングを用いた「オートレベリング機能」の付いた3Dプリンターだと、積層ピッチが0.03mm以下での印刷が正しく行われない恐れがあります。
例:Saturn4シリーズ、Mars5シリーズ、Photon Mono M7など

TH-HTは液体状態での粘度が高めなので、プラットフォームとレジンバッド同士を押し付けるときに強めの圧力が必要になってきます。

さらに光の透過深度も低いため、正しい位置までプラットフォームを押しつけられていないと、そもそもUV光がプラットフォームや印刷中のモデルに届かいないこともあります。

つまり、オートレベリング機能の付いた3Dプリンターでは、強い力がZ方向にかかったとき圧力が逃げてしまうため、プラットフォームにラフトが定着しない「硬化不良」や「印刷ミス」が発生しやすいというわけです。

推奨機種としては、プラットフォームが7インチ程度の小型機、オートレベリング機能非搭載の3Dプリンターがオススメです。例:ELEGOO Mars4Ultra

リトラクト後の待機時間

積層ピッチを0.03mm以下まで細かくする場合、スライサーソフトの設定で「リトラクト後の待機時間」を長めにする必要があります。

これはTH-HRのレジンに限ったことではないのですが、例えば、0.05mmピッチと0.02mmピッチではレジンを押し付けたあとの適正な待機時間は変わってきます。

積層ピッチ0.05mmの隙間のレジンを逃がすのにリトラクト後の待機時間を「2秒」に設定して正しく印刷できたとしても、同じ設定のまま積層ピッチ0.02mmに下げた場合、リトラクト後の待機時間「2秒」のままでは、プラットフォームとリリースフィルム間のレジンは逃げ切っておらず、ブルーミングという現象が起こってしまう恐れがあります。
※参考:「ブルーミング」

ですので、積層ピッチを下げたいときは、あわせて「リトラクト後の待機時間」も増やしてやる必要があります。

私の感覚ではありますが、室温20度、印刷ピッチ0.02mmの場合、

  • リトラクト後の待機時間(断面 10mm×10mm 程度のモデル):5秒以上
  • リトラクト後の待機時間(断面 20mm×20mm 程度のモデル):7秒以上

この程度の待機時間は設けたほうがよさそうです。

印刷時間が長くなってしまいますが、綺麗な出力結果が得られるので割り切って気持ち長めに設定してやりましょう。

プラットフォームへの定着について

プラットフォームが正しく水平にキャリブレーションされていて、Z軸が0点のときの隙間の広さは0.4mm程度(コピー用紙3枚~4枚)に調整されているか、どちらも適正にキャリブレーションされていないとプラットフォームにレジンが定着しないことがあります。

ボトム層の印刷が成功しない場合は、まずはプラットフォームのキャリブレーションを見直してみてください。

キャリブレーションが正しく調整されているにも関わらず、プラットフォームにレジンが定着しない、もしくは途中で剥がれるという場合は、「初期層の露光時間」を伸ばしてみてください。ちなみに私は180秒で設定しています。

レジンの靭性について

公式の商品ページやAmazonの写真の中で、「靭性が強い」という謳い文句でフィギュアの剣を曲げたりしていますが、実際のところTH-HRはそこまで靭性は強くありません。

私としては、同社のM68、M58シリーズと比べても、TH-HRのほうが若干靭性は低めだと感じています。

ただし靭性が低い代わりに、ヤスリを当てたときの削りやすさはTH-HRのほうに分があります。表面を削ることが前提である「原型用モデル」の出力用途だと、M58・M68よりもTH-HRのほうが私は好みです。

印刷設定

私が使用している印刷設定です。よければ参考にしてみてください。

  • 機種:ELEGOO Mars4Ultra
  • 室温:20度
  • 使用レジン:resione TH-HR

テストピースを印刷してみる

使用テストモデル:Ameralabs Town

テストモデル:RESIONE resin precision test piece

※私のやり方ではボトム層を押さえつけて印刷しているため、下部が圧縮されて形状が歪んでいますが気にしないでください。(正しい形状に印刷できるようキャリブレーションし直すと今度はモデルがプラットフォームに定着しなくなるため)

総評

剥離抵抗も弱めなため、細いサポートでも安定した印刷が十分可能でした。難しいのは最初の設定出しだけなので、一度調整してしまえばかなり優秀なレジンとして運用することができそうです。

低収縮という特性が効いているのか、モデルの再現性が非常に高く「パーツ同士の勘合部分が歪んで合わない」ということもほぼ起こりませんでした。オーバーハング部でサポート周辺が太ったりする現象もほぼ起こらず、PC画面でスライスした状態そのままで出力されるため、軽く感動できるレベルで優秀でしたね。

今回わたしは「赤陶泥色」というオレンジ色を選択しましたが、この色もかなり気に入っているポイントの一つです。不透明度が高く、陰影も入りやすいため、サーフェイサーを塗装しなくてもモデル形状の確認しやすいです。

また二次硬化後の物性が私の使用用途にピッタリなのも良い点でした。

私は原型用のモデルでTH-HRを使用したのですが、削り心地が非常に良いんですよね。モデラーが分かりやすい例えをするならば、タミヤの速乾エポパテ。ちょっと粘っこいけどサクサク削れるあの感じ。

ただし、削り心地がいい代わりに靭性は低いため、細いパーツとかはちょっと折れやすいです。が、この2つはトレードオフな関係なので目をつむりましょう。

それからレイヤー層を0.02mmピッチでの印刷をすると、高さが15cm以上のモデルになると印刷時間が20時間を平気で超えてくるという点も少し考えどころではありますね。

私は原型用途でしか使っていないの多少の時間がかかっても許せるのですが、出力品販売でTH-HRを使用したい場合はそのあたりの注意が必要です。

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