複製で使える『シリコーンゴム』の種類や性能を徹底比較!用途にあった一番オススメのシリコンとは?

モデラー

  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

みなさんはガレージキットの複製で使用するシリコーンゴムを選ぶときに、何を買ったらいいのか迷ったことってありませんか?

種類によって値段も特性も違うので、はじめて複製する人からすれば不安ですよね。

というわけで、この記事では私が今まで使ってきたオススメのシリコーンゴムを簡単に紹介していこうと思います。

シリコンの選び方

はじめてシリコーンゴムを買うとき「そもそも何を見て選んだらいいかわからない」という方もいると思いますので簡単に説明しておきましょう。

なにがいいのか分からないときは、「何個複製したいのか」と「使いやすさ」を基準に選んでみてください。

何個複製したいか

シリコン型というのは無限に使い続けられる代物ではなく、何回か使っていくにつれて劣化して壊れてしまうものです。

例えば模型用として売られている3000円程度のシリコーンゴムだと、20~30回しか使えないことが多いです。

ですが値段の高い5000円の高級シリコーンゴムだと、40~60回使えるものもあるのです。

何が言いたいかというと、

  • 3000円のシリコンで30個複製する→1ショットあたり100円
  • 5000円のシリコンで60個複製する→1ショットあたり約83.3円

となり、シリコン型を性能限界まで使い続けることで、パーツを1回生産する値段に差が生まれてきます。

逆に、性能も高いからといって5000円のシリコンを少量生産に使っても、30個しか複製しなかったという場合、1ショットあたり166.67円となり、3000円のシリコンよりもコスパが悪くなってしまいます。

使いやすさ

シリコンにも色々な種類や特性があります。

蓋開けてそのまま使えるものもあれば、2種類をブレンドするものもや、真空脱泡機が必要だったりするものもあります。

使いやすいのが一番ですが、実際のところ性能の高いシリコーンゴムは癖のあるものが多いです。

自分の環境に適しており、使いこなせそうなシリコーンゴムを選んでみましょう。

初心者におすすめ!『旭化成ワッカーシリコーンM8012』

旭化成が販売している「ワッカーシリコーンM8012」です。一部の模型メーカーが販売しているシリコンのOEM元だったりするみたいですね。

値段は1kgあたり3000円~、硬化時間は8時間程度、すべてが平均的な性能なので、複製初心者でも扱いやすいシリコンと言えるでしょう。

シリコンの耐久性については良くも悪くもなく、離型剤を上手く使えば常圧複製で30個くらい複製できます。お試しでガレージキットイベントの商品を作るときにもオススメ。

気泡抜けについても性能はいいほうです。しかし油断していると細かいモールドにシリコンが入りきらない事が稀にあるため注意は必要。

シリコーンゴムを一気に流さず、細い糸を垂らすようにして表面をシリコーンゴムの膜で覆ってから、最後に全体に流し込む、という順をふんで丁寧に使いましょう。

さらに詳しい扱い方については「フィギュア複製を徹底解説!シリコンを使ってレジンを流す型を作ってみよう!」の記事をどうぞ。

小ロット(2~5個程度)の複製がしたい場合は?

趣味でスクラッチしたプラモデルのパーツを「2~5個だけレジンで複製したい」といった、小規模の複製の場合なら「シリコーンゴムは何を選んでも大丈夫」と個人的には思っています。

この記事で比較している「強度」や「耐溶剤性」は、1つの型で30とか50抜いたりするのを前提にしたものです。小ロットの複製なら安物のシリコーンゴムを買ったとしても、大体の作業はこなしてくれるでしょう。

とはいえ、どこのメーカーかも分からないシリコーンゴムはできるだけ選ばないほうがいいですね。なかにはロクに使えないものとかもあるので。

確実なのは模型店や東急ハンズなどで取り扱っている「模型用のシリコーンゴム」ですね。クレオスの「Mr.シリコーン」、ウェーブの「Be-J SG070」、造形村の「新スーパーEXシリコン」なら間違いはないでしょう。

ウェーブ・シリコーンゴム 1kg (硬化剤付き)

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中級者向け:複製業者RCベルグの愛用品『ダウRTV8000・RTV3498』

ダウが取り扱っている「RTV8000・RTV3498」という2種類のシリコーンゴムは、複製業者のRCベルグが使っているシリコーンでも有名ですよね。

一般流通はしておらず、RCベルグのHP内の通信販売ページからのみ購入できます。硬化時間は8時間程度で、値段は1kgで5000円ほど。最近値上げしましたね。

RTV8000は硬いゴムのような性質をもっており、RTV3498は柔らかく弾力性があり引っ張っても千切れにくいという性質をもったゴムです。

このシリコーンは2種類を混ぜて使用することが推奨されております。ブレンドすることでバランスの取れた高性能のシリコーンゴムになるというわけですね。

ブレンドの比率についてですが、RCベルグでは「1:1」を推奨しているようです

ちなみに添加する硬化剤も、1:1で入れればOK。ちょっと計算が面倒くさいですが。

ブレンドの比率を変えることによって、シリコーンゴムの特性も変わってきます。

かっちりしたメカ原型には、8000:3498=6:4 とか、

逆テーパーの多いフィギュア原型には、8000:3498=4:6 といったオリジナルブレンドをする方もいらっしゃるらしいです。

気になる耐久性についてですが、常圧複製なら50~70個、真空複製なら30~50個、ほど使えます。

引き裂き強度も耐溶剤性も文句なしの性能なので安心して使えますね。

ガレージキットのイベントでキットを大量に用意するという方にオススメのシリコンです。

使用期限

そうそう、どのシリコーンゴムにも言えることですが「使用期限」というものがあるのをご存知でしょうか。

パッケージに書かれてないシリコーンゴムもありますが、RTV8000やRTV3498にはラベルには「製造年月日」と「使用期限」が書かれているので鮮度の把握がしやすいですね。

わたしの経験上、大抵のシリコーンは未開封状態でも1年~2年で固くなってきます。劣化してくると本来の性能が出せなくなってくるので、できるだけ使う直前に買うようにしましょうね。

上級者向け:模型店で買える身近な高性能シリコン『造形村 透明シリコン』

全国のボークスや、ボークス公式ホビー天国オンラインストアで販売されている「透明シリコン」です。

名前の通り、色が半透明で硬化後でも中身の原型が見えるため、粘土埋めを必要としない「引き裂き型」を作るのによく使われているシリコンでもありますね。

値段は1kgで5000円ほど。硬化時間は他のシリコンと比べて長めの24時間ほどです。冬場だと48時間は待たないと完全に固まりません。

このシリコーンゴムは粘度が高いため扱いが少し特殊です。主剤と硬化剤を混ぜたあと真空装置で気泡を抜き、粘度埋めした型にシリコーンゴムを一気に流し込む』という方法が一番きれいにゴムが流れてくれます。

普通のシリコーンだと「糸を垂らすようにしてシリコーンゴムの薄い膜を作りながら原型パーツを覆ってやる」という王道の工程がありますが、このシリコーンに関してはその作業は必要ないみたいです。逆に気泡が噛むのでやらない方がいいのだとか。

私はシリコーン型がダメになるまで使い潰したことはありませんが、別のモデラーさんからの話を聞くところ耐溶剤性も悪くなく、上手く使えば40~50回くらいは複製できるらしいです。

この透明シリコンは粘度が高く気泡が入りやすいため、「真空脱泡機」で気泡を抜いてから使ってる方も多いみたいです。

真空脱泡機についてはこちらの記事『レジン複製で活躍する『真空脱泡機』を自作!低コスト・高品質なガレージキット複製が出来る設備を整えてみた』を参考にしてみてください。

もちろん、気泡が入らないように丁寧に撹拌してやれば真空脱泡しなくても使えないことはないですが、色が透明なのもあり気泡が余計に目立ってしまい気持ちいいものでもありません。

簡単なものであれば、料理などで使われている「真空おひつ」を使ってシリコーンゴムの真空脱泡ができるます。

いきなり真空脱泡機を揃えるのは大変という方は、まずは真空おひつで挑戦してみるのもいいかもしれませんね。

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以前私も真空脱泡に使っていた加藤産業の「真空おひつ」。Amazonで確認すると一緒に買われているものに「おひつ用のポンプ」と「造形村透明シリコーン」がしっかり入ってるのが笑えますね。

上級者向け:柚Pも愛用している『信越 KE-1417』

最後に信越シリコーンが販売している「KE-1417」です。

KE-1417には、硬化後の硬さが違う「KE-1417-30」と「KE-1417-40」の2種類があります。30が柔らかめで、40が硬め。

値段は1kgあたり5000円ほど。

耐溶剤性が非常に高く、RCベルグのシリコーン同様に常圧複製なら50~70個、真空複製なら30~50個くらいは平気で抜ける性能をもっています。

個人的な印象だとRCベルグのものと同等かそれ以上の耐久性もあるんじゃないかとも思っています。

硬化時間は24時間とかなり長め。気温の低い冬場は48時間で完全硬化って感じです。硬化が遅いので時間に余裕がある時に使いたいですね。

強度・耐溶剤性・性能面についての文句は無いのですが、いくつか扱いにくい点もあります。

このKE-1417は、粘度が非常に高く気泡抜けがとても悪いです。

気温の低い冬場なんかは最悪ですね、主剤の入っている缶を逆さまにしてもなかなか落ちてこないんですもの。硬いので混ぜるのにも力いるし。

気泡抜が悪いので真空脱泡設備は必須と言っていいでしょう。

脱泡せずに使えるかもしれませんが、表面・内部の気泡はかなり残ってしまうため、本来の性能を発揮できない恐れがあります。

おわりに

というわけでオススメのシリコーンゴムの紹介でした。

シリコーンゴムの性能をさらに活かすためには、離型剤の選定も重要ですので、お時間があればこちらの記事も参考にしてみてください。

レジン複製で使える『離型剤』のオススメは?愛用している5種類を比較解説してみた。

レジン複製で使える『離型剤』のオススメは?愛用している5種類を比較解説してみた。

それでは。