こんにちは。柚P(@yzphouse)です。
前回の記事『シリコン型とレジンを使った本格的な複製をしてみた!「パーツの粘土埋め編」』の続きです。
今回は、粘土にパーツを埋めたところに「シリコーンゴム」を流して、本格的なシリコン型の形に仕上げていきます。
目次
粘土埋めをしたベースに「型枠」を取り付ける
前回の記事で終わったところからスタートです。原型を粘土で埋めてある状態です。これをシリコーンゴムで置換して「シリコン型」を作っていきます。
型を作るのに使用する「シリコーンゴム」ですが、このシリコーンゴムは硬化前は「液体」の状態なんですよね。なので、液状のシリコーンゴムを流すにあたって、型から漏れないように壁となる「型枠」を設けてやる必要があります。
シリコーンゴムが流れ出さなければ何使ってもいいのですが、私はウェーブの「キャスティングウォール」という商品を使用しました。
これです。お値段は定価で3000円ほど。定価だとちょっと高いですが、Amazonだと2200円くらいで安く売ってます。
ちゃんと組み立てれば、シリコンの漏れも少なく、組み立ても掃除も簡単なので「非常に性能の良い型枠」といえるでしょう。つい最近発売された新商品ですが、私は気に入りすぎて既に2セットも買っちゃってます。
シリコーンゴムを流す前に粘土に「離型剤」を塗っておく
普通なら、型枠を取り付けたらそのままシリコーンゴムを流し始めるのですが、その前に粘土とパーツの合わせ目の部分に「離型剤」を塗っておきます。
使用した離型剤はクレオスの「Mr.シリコーンバリアー」です。
粘土自体に離型剤を事前に塗っておくことで、シリコーンゴムから粘土を剥がす工程(この後やります)がすごく楽になります。
使用している「ほいく粘土」自体も、シリコーンゴムからの型離れが良いとされる粘土ですが、塗ると塗らないとでは剥がれ易さが大違いです。まだやったことない人は騙されたと思ってやってみてください。粘土が綺麗に剥がれすぎてビビります。
あと、Mr.シリコーンバリアを塗る時に注意しないといけないことがあります。
Mr.シリコーンバリアに含まれている溶剤成分が油粘土を溶かすという性質があるので、溶けた油粘土が埋めている原型に付着しないように注意しましょう。
溶けた油粘土が原型に付いてしまうと「変形」や「バリ」の原因にもなるので粘土の部分にだけ塗るようにしましょう。
シリコーンゴムを準備する
粘土埋めをしたベースにシリコーンを流す準備ができたら、複製に使用するシリコーンゴムを用意しましょう。
私のオススメのシリコーンゴムについてはガレージキット複製で使用するシリコンを比較してみた。の記事を参考にしてみてください。
複製で使える『シリコーンゴム』の種類や性能を徹底比較!用途にあった一番オススメのシリコンとは?ちなみに、この記事で使っているのは「旭化成ワッカーシリコンM8012」です。
シリコーンと硬化剤を混ぜる
使用するシリコーンを準備したら、硬化剤と混ぜていきましょう。
準備する道具についてですが
- シリコーンと硬化剤(茶色い瓶)
- 量り(出来れば0.1gまで計測できるやつ)
- カップ(シリコーンを混ぜる用。PP製が良い)
- ポリエチレン製へラ
- 紙コップ
シリコーンの量を計る「量り」はデジタル製で0.1gまで細かく計測できて、2~3kgまで対応しているものが良いですね。私はタニタの「デジタルクッキングスケール」を使っています。
実際にはシリコンの計量で、0.1gという細かい単位は使わないのですが、この後の工程の「レジンの計量」のときに0.1gまで計れると役にたちます。
そのほか、一体成型の「ポリエチレン製のヘラ」なんかも用意しておくと便利に使えます。ダイソーで購入しました。シリコーンゴムが付いても硬化後に剥がすことが出来るので再利用が可能です。
主剤(シリコーン)と硬化剤を混ぜる
シリコーンは「主剤(シリコーン)」と「硬化剤」を混ぜることで、化学反応で硬化します。
硬化剤を混ぜる量は、シリコーンの種類によって違います。
今回使用する旭化成M8012は「主剤:硬化剤=100:4」と書いてあります。つまりシリコーン100gに対して、硬化剤を4g混ぜれば良いというわけですね。
それでは、シリコーンと硬化剤を計っていきましょう。
基本的なことですが、カップの重さが入らないように、カップを置いた状態ではかりをOセットして使いましょう。これで、カップの中に入れたシリコーンだけの重さがはかりに表示されます。
あの大きさの型に流し込むシリコーンの量はだいたい700gくらいですかね。
で、ここで「使用するシリコーンの量ってどうやって決めたの?」って思いませんでした?
前回の記事でいくつか反響を頂いたのですが、その中で『次回の記事の中で、型に流すシリコーンの量はどうやって計算しているのか?型作りで使用するシリコーンはどのくらいの量を購入すれば良いのか?を記事で取り上げてください!』というコメントがありました。シリコーンの使用量の目安が分からないという人は少なくないようです。
私もつい最近まで使用するシリコーンの目安を知らずに、”カン”と”経験”でやっていました。「だいたいこの大きさならこんくらいやろー(適当」みたいな。なので説明する、といえるほど詳しくないです(汗
ここで紹介する計算方法は、複製にめちゃくちゃ詳しい友人Tさんから教わった方法です。ありがとうTさん。
使用するシリコーンの簡単な計算方法
「使用する量」については、シリコーンを流す型の大きさ「縦×横×高さ(単位:cm)」の体積(単位: cm3)をグラム(単位:g)にすると、大まかな使用する量が計算できます。非常に簡単ですね。
私がシリコーンを流す型の大きさは、縦が17cm、横が12cm、高さが3.5cmは欲しいので、計算式はこうなります。
『 17cm×12cm×3.5cm=714 cm3 』
714cm3、つまり「714g」のシリコーンを混ぜればいいということが分かりました。この程度の掛け算なら誰でも理解できるでしょう。
この計算方法を応用すれば、「シリコーンをどれだけ購入すれば良いのか」も簡単に計算できますね。ただし、計算する時に、どのくらいのパーツがあるのか、どんな型の大きさにするのかといった「シリコン型を作るレイアウト」をある程度決めておく必要はありますが。
私の場合だと、パーツ数は大型のも含め33個、1つあたりの型の大きさは「17cm×12cm×5cm」で統一、その大きさの型で全パーツをレイアウトすると、合計6個の型が必要、というところまで決めてから、シリコーンを購入しました。
型1つあたり「17×12×5=1020g」でそれが6つ必要ということなので「1020×6=6120g」という結果が出ます。この計算式から「6kg~7kgのシリコーンを購入しておく必要がある」という事がわかりました。
ちなみに、この時私が購入したシリコーンは予備も含めて「M8012 1.0kg」を8本の8kgです。シリコン型を製作した後は、500gほど中途半端に使用した余りと、1.0kgの未使用まるまる1本が余りました・・・合計で1.5Kgのシリコーンが余りました。
つまり、実際に「6.5kg」のシリコーンを使ったという事ですね。計算で6120gと出て、実際に使用した量が6500g、簡単な計算式にしては恐ろしく正確でした・・・
主剤(シリコーン)と硬化剤を混ぜる(続き
話が少し逸れましたが、続きをやっていきます。
次は硬化剤を量りましょう。先程、シリコン700gを取り出したので、その量にあう硬化剤を紙コップに取り出します。
このシリコーン(M8012)は主剤100gに対して、硬化剤4gという指定がされています。なので「700:硬化剤=100:4」で計算できます。簡単に言えば、7×4で使用する硬化剤の量が計算できます。
で、計算した28gの硬化剤を紙コップに出しました。
ちょっと入れすぎて28.9gになってますが、ある程度の多い少ないは許容範囲内です。
シリコーンを入れたカップに、硬化剤を投入して混ぜます。主剤と硬化剤が均等に混ざるようにしっかり混ぜます。
このとき、出来るだけ「気泡が入らない」ような混ぜ方をしましょう。と言っても、気泡が入らない混ぜ方がどんなやり方なのかわ分かりませんけど・・・乱暴にぐちゃぐちゃ混ぜるのは気泡が入るのでNGということです。
こんな感じに均等に混ざってトロトロになったらOKです。
シリコーンを粘土埋めをしたパーツに流す
硬化剤を混ぜたシリコーンは化学反応が始まって固まり始めます。硬化までは6時間~7時間と長いですが、なるべく素早く作業を進めましょう。
混ぜたシリコーンは、そのまま一気に型に流すのではなく写真のように、パーツ表面を覆うような「薄い膜」を始めに作ります。
プラ棒とかを使って、混ぜたシリコーンを「細い糸」のようにして垂らしながらパーツ表面を覆います。
表面にシリコーンの膜を作ったら、パーツとシリコーンの間に入り込んだ気泡を潰してやりましょう。「エアダスター」とか、空気圧を高くした「エアブラシ」とかを使いましょう。
エアーを使って目に見える気泡を潰したら、追加でシリコーンを流します。ここでもまだ全部は流しません。半分くらいですかね。
薄い膜を作ったあとは一気に流すという人が多いと思いますが、私は出来るだけ気泡が上がってきやすいように更に2回に分けてます。本当にこれが効果があるのかはイマイチわかりません。気持ちの問題ですかね。
上がってくる気泡を潰しながら、数回に分けてシリコーンを全部流します。
で、この状態で硬化するのを待ちます。大体6~12時間ほど「水平な場所」で放置します。
「水平な場所で硬化させる」というのが重要なポイントです。斜めになっている所で硬化させちゃうと、せっかく粘土埋めで綺麗な平面を作った意味が無くなっちゃいますからね。
シリコンが硬化したら裏側の粘土を取り除く
片側のシリコーンが完全に硬化したら、ひっくり返して、粘土を広げた「MDFボード」と「パーツを埋めた油粘土」を剥がします。
油粘土を剥がす際、シリコンとパーツの間に「油粘土」が残らないように綺麗に取り除きましょう。私が粘土を取り除く作業する時は、細かい部分に「スパチュラ」とか「ニードル」とか「ポイント歯ブラシ」とか使いますね。
細かい粉みたいになった油粘土には「ポイント歯ブラシ」が使えます。使っていくうちにブラシ部分が粘土まみれになりますが、ラッカーシンナーで洗ってやれば綺麗になるので再利用も出来ます。
片側のシリコーンに離型剤を塗る
※シリコン型にする工程の中で一番重要なポイントです!忘れずにやりましょう!
粘土を取り除いた面に、もう片方の型となるシリコーンを流すのですが、このシリコーン同士が引っ付かずに後から剥がせるよう「離型剤(剥離剤)」を塗っておく必要があります。
「離型剤(剥離剤)」はシリコーンにまんべんなく塗りましょう。使用する離型剤は、さっきも油粘土に塗った「Mr.シリコーンバリアー」です。
シリコーンがどうかして引っ付いてしまうのはのは、同じシリコーン同士だけです。なのでシリコーンの白い部分にだけ離型剤を塗りましょう。
表面に埋まっている「原型」にはシリコーンは引っ付かないので塗らなくてもいいです。原型に離型剤が付いたらいけないということも無いのですが、離型剤を塗ったところに「塗膜の厚み」が出来てしまうので、なるべく原型には塗らない方がいいですね。
イベント前の多忙な時期、いつも、この離型剤の塗り忘れによる「シリコン型に原型が生き埋めになる事故」を散見します。離型剤を塗り忘れるだけで今までの作業がすべて無駄になり、かなりの作業ロスに繋がります。忘れずに必ず塗りましょう。
もう片方にシリコーンを流す
片側のシリコーンに離型剤を塗ったら、反対側にもシリコーンを流していきましょう。
その前に、型枠の高さが足りないので追加します。
使用しているウェーブの「キャスティングウォール」は型のフチに「ダボ」が付いているので、簡単に型枠の接続・追加が出来るような作りをしています。追加の枠を接続してやれば「型枠の高さの増設」作業完了です。
これ以外の「型取り用ブロック」を型枠として使っている場合は、裏側にブロックを追加してやって高さを増やしてあげましょう。
ダボのテンションだけで接続するのは少し不安(ちょっとの衝撃で外れたりしそう)なので、マスキングテープで補強しました。これなら、ある程度の衝撃では外れないでしょう。
型枠の準備ができたら、さっきのやり方でもう片方にも同じようにシリコーンを流していきます。
「シリコーンと硬化剤を混ぜて→表面に薄い膜を作ってエアーで気泡を潰す→数回に分けてシリコーンを流す→水平な場所で硬化させる」
です。
出来上がったシリコン型の調整
シリコーンが完全に硬化したら型枠を外します。変なことをしてない限りは、このような「豆腐」みたいになっているはずです。
型枠から外したすぐは、シリコン型の外側に型枠の隙間からシリコーンが流れ出して発生した「バリ」がたくさん出ています。バリといっても素材がシリコンなのでふにゃふにゃのバリです。手でちぎるなり、カッターで切り取るなりして綺麗にします。
型の外側のバリを綺麗に除去したら、離型剤を塗った部分からシリコン型を2つに割きます。
離型剤をちゃんと塗ってなかったり、塗り忘れてたりしたらこの「2つに割く作業」ができません。シリコンの固まりの中に原型が取り残されたままご臨終です。(もしやってしまったらカッターでシリコン型を切り裂いて原型を救出してやりましょう。)
2つに割いたらこんな感じです。綺麗な2面型になってますね。
これだけではまだ、型としては未完成なので、残りの「原型を取り外す」と「湯口とパーツを繋げる」という作業をしてやりましょう。
原型をシリコン型から取り外す
原型が埋まっているところには、レジンが流れてくるので、原型もシリコン型から外しておきましょう。それから、湯口として埋め込んだ「ストロー」「3mm、5mmの角棒」も忘れずに取り外します。パーツの取り忘れがないように注意しましょうね。
「原型とシリコン型が強力に引っ付いている」というわけではないので、適当に引っぱってやればパコッと外れます。
「細いパーツ」や「薄いパーツ」といった、破損しやすいパーツはシリコン型から取り外す際に壊れないよう、慎重に取り外しましょう。
湯口とパーツを繋げる
最後に「原型が埋まっていたパーツの部分」と「レジンを流し込む湯口」をシリコン型の一部をナイフで切って繋げます。プラモデルでいうところの「ゲート」を作るイメージです。
この作業では「新品の刃を付けた切れ味の良いナイフ」を使用しましょう。シリコンは柔らかいので切れ味が良くないと綺麗に切れません。
湯口を切って繋げるときの形は、四角型だったり、V字だったり、、、人によって様々ですね。初めての方は「V字で湯口を作る」ほうが簡単だと思います。
他にも、「綺麗な繋げ方」とか「2面型で、湯口をどっち側の型に作るのか」とか、ポイントがいくつかありますが、文章ではなかなか説明し難いですね・・・この辺の詳しい事もまた別の記事で紹介出来たらと思います。
湯口を繋げたら、実際にレジンを流してみましょう。湯口をちゃんと繋げられてなかったら、レジンを流した時に「流れが悪い」とか「ちゃんと繋がってなかった」というのが目で見てわかります。
上手くレジンが流れなかったら、ちゃんと流れなかった部分を修正して、再度レジンを流してみましょう。これの繰り返しです。湯口とパーツの部分がちゃんと繋がって、1発ですべてのパーツが上手く複製できるようになれば「シリコン型」の完成です。
次回:作ったシリコン型にレジンを流す「量産編」
シリコン型が完成したら、あとはレジンを流して「パーツを量産」していくだけです。
次回は作ったシリコン型にレジンを流していきましょう。
フィギュア複製を徹底解説!シリコン型にレジンを流してパーツ量産してみよう!
フィギュア複製を徹底解説!シリコン型にレジンを流してパーツ量産してみよう!それでは。