レジン複製で活躍する『真空脱泡機』を自作!低コスト・高品質なガレージキット複製が出来る設備を整えてみた

モデラー

  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

レジンでフィギュアなどを複製したことある方なら「真空脱泡機」というワードを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

真空脱泡機といえば複製業者が使っているイメージがあると思いますが、パーツを自分で選定して購入して組み立てれば格安で自作することもできるらしいのです。

というわけでこの記事では、私が製作した「自作真空脱泡機」の作り方について紹介していきます!

そもそも真空脱泡機って何に使うの

真空脱泡機というのが何なのかよく分からない方もいると思いますので簡単に説明しておきましょう。

この装置は『空気を吸い込むポンプ(真空ポンプ)を容器(デシケーター)に接続したもの』です。

容器内の空気を抜き取り「真空状態」にすることで、空気の体積を大きくしたり小さくしたりできる機能があります。

容器内部を真空状態にすることで空気の体積を大きくし(ボイルの法則)、シリコーンゴムの微細気泡(空気)を大きく膨張させることで「脱泡作業」が容易にできるようになります。

それ以外にも、シリコン型にレジンを流すとき、『真空(気体の体積増)→常圧(気体の体積減)』にすることで効率的にレジンを流すことができたりもします。この注型方法は『真空注型』と呼ばれています。

真空注型では、通常の常圧複製では難しい”トップゲートの型”も作ることができます。

今回製作していく装置は、シリコーンゴムの脱泡をする『真空脱泡機』、レジンを注型する『真空注型』のどちらもの使い方もできる万能タイプを目指します。

真空脱泡機を製作するために購入したもの

それでは製作に必要なアイテムを揃えていきましょう。

必要なものとして、空気を抜くための真空ポンプ(一番値段が高い)、シリコーン型を入れることができる容器、ポンプと容器を接続する配管類があります。

ここで、今回私が真空脱泡機を作るにあたって相談に乗ってくれたり協力してくださった方を紹介しておきます。真空脱泡機に必要なスペックやどのメーカーの機材がオススメか教えてくださった『けろよん様(@keroyon0029)』、製作にあたって参考になるウェブサイトの紹介、自身の真空脱泡機の環境を詳しく教えてくれた『たつ様(@tatsubaya)』この場を借りてお礼を申し上げます。

それから「プロ・フィット社外記」様の自作真空脱泡機製作の記事にもかなり助けられました。ありがとうございました。

真空ポンプ

まずは真空脱泡機で一番重要な「ポンプ」から。

ポンプを買うにあたってなにを基準に選べばいいのか全然分からず路頭に迷っていたところ、Twitterにて、けろよんさんからアドバイスをいただけました。

レジン注型で使用するなら、24cmの寸胴鍋(容量10L)で180L/min以上のポンプが理想ということ。ふむふむ。

ちなみに真空脱泡機の180L/minは「一分間に180Lの空気を抜くことができる」という読み方です。

1分間に180Lなので、1秒間で3Lの空気を抜くことができるとも言えます。

これで計算すると「24cm径の寸胴鍋(約10Lの容量)は3秒とちょっとで真空にできる」となるのですが、これが落とし穴だったりするわけです。

しかし、そんな早く真空にすることは不可能です。

このポンプに記載されているスペックは、「無負荷で運転した性能」だと思うんですよね。容器の中が真空に近づくにつれて、空気を引っ張る力も必要になり、結果、完全な真空になるまでに追加の時間がかかってしまいます。

「じゃあ何を基準に選べばいいの?」って話なんですよね、これで私も悩みました。ですので真空脱泡の環境がある人に「体感」を聞くのが一番手っ取り早いです。

参考までに私の環境を書いておきます。

170L/minの真空ポンプを使って、27cm径の空の寸胴鍋(容量15L)を真空(-0.1Mpa)にするまでに60~90秒かかりました。

しかし真空になるまでに60秒もかかってたらレジン注型は難しいので、容器の中にスタイロフォームなどを入れて容積を減らして使っています。

こうすることで真空になるまでの時間が30秒くらいまで短くすることができました。

私が使っている真空ポンプはこちら。

国産の真空ポンプが安心ということなので日本のメーカーっぽいところを選んでみました。

BBK(文化貿易工業株式会社)というメーカーの真空ポンプです。ちなみにポンプ本体にはMade in Chinaと書いてあります。(全く国産ではない)

国産の真空ポンプでは『TASCO』というメーカーが有名なのですが、そのぶん値段も高く私には手が出せませんでした。

私が購入したBBKの真空ポンプはAmazonで49,680円で購入できました。

5万円で買える格安ポンプではありますが、排気量(分)142ℓ/170ℓ(50/60Hz)とかなりのハイスペックモデルとなりますTASCO製の同等スペックの真空ポンプ買うとなるとこいつの二倍くらいの値段しますから。

まだそこまで使い込んではいないので、この商品の耐久性に関してはまだわかりませんが、今のところはなんの問題も出てません。(追記:2022/09/20 3年経ちましたがまだ現役で使えてます。)

あと逆流防止弁がついてるのもありがたいですね、雑に使ってもオイルの逆流が起こらないので安心して使えます。

ちなみに私の住む地域(西日本)は100Vの60Hzなので、排気量170L/minで使えます。西日本は勝ち組です。やったー!

配管パーツなど

続いて配管パーツの紹介です。

パーツはすべてモノタロウで購入しました。はじめは「配管パーツなんて現物見て買ったほうがよくね?」なんて思って近くのホームセンターを一通り見てきましたが、そもそも必要なパーツ自体が売られてなかったり値段が高かったりと散々だったので、一度家に帰りモノタロウで全種類のパーツを注文してきました。

購入した配管類がこちら。

パーツ選びでは『ネジの規格』に注意して購入しましょう。

私はプロ・フィット社外記様と同様に「PT1/4」を中心に揃えてみました。PTってのは「管用テーパーねじ」のことを指します。

寸胴鍋(容器)に接続する側のネジだけは「PF1/4」を使います。そのため、片側が「PT1/4」、もう片側が「PF1/4」のジョイントパーツも買ってます。

真空計については、安く済ませたいならモノタロウ製の真空計でもいいですね。動きは悪いですが目安としては十分使えます。

シールテープ

配管同士を接続する際に使うシールテープも用意しておきましょう。

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シールテープは粘着性の無い極薄のビニールのようなもので、ネジ部に巻き付けて漏れ止めとして使われます。

容器(デシケーター)

容器には「アルミ製ずんどうなべ」を使います。私はは27cm径の寸胴鍋を買いました。

使ってから思いましたが、今回購入した真空ポンプのスペックだと24cm径の寸胴鍋がちょうどよかったかなとすこし後悔。容積が大きいぶん真空になるまでの時間が長くなってしまいます。

アクリル板

次に容器にかぶせるフタです。

フタとして使うのは300mm×300mmサイズで厚さ20mmのアクリル板(キャスト)です。アクリルショップはざいやにてオーダー注文しました。

ちなみにはざいやさんは東京に実店舗も構えてるらっしゃるので、近くにお住まいの方は直接お店へ行って購入すれば送料分安く買えるでしょう。

その他必要なもの

そのほか真空脱泡機に使用するために用意したものはこちら。

  • 3mm厚ゴムマット 300×300
  • 300mm幅アプリケーションフィルム
  • ゴム系接着剤
  • スタイロフォーム
  • アルミテープ
  • マスカー

合計金額

色々と買いこみましたね。合計金額は67,000円となりました。

思いのほか安く作れて大満足です。

パーツを組み立てていく

必要なパーツが揃ったらあとは組み立てるだけです。1日もあれば余裕で終わります。

まずは配管から組み立てから。

モンキーレンチやウォーターポンプなどを用意しておけば、配管の組み立てを簡単に進めることができます。

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配管の接続

ボールバルブは「真空ポンプとつなげる排気側の弁」と「容器を常圧に戻すための吸気弁」の2箇所に取り付けます。

配管同士の接続が済んだら、取り付けするため容器に穴を開けましょう。

アルミ製の寸胴鍋の側面に配管を差し込む穴を開けていきます。

印をしている部分ですね。

差し込むネジ(PF1/4)はΦ13mmです。

穴あけに使おうと思ってた手持ちのステップドリルがこれ。ちょうどΦ13mmが無い・・・。

仕方ないので12mmで開けた穴をリューターで地道に広げて対応しました・・・。

▼Φ13mm対応のステップドリルはこちら

無事に13mmの穴が空けれたら、ネジを差し込んで具合を確認してみます。

いい感じですね。ナットを締め込んで固定していきましょう。

そのままナットを締め込むだけだと、ネジのスキマから空気が漏れるためコーキング材を塗っておきます。

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コーキング材を塗った上からナットを締め込みます。

このままでは汚いのではみ出したコーキング材は綺麗に拭き取っておきましょう。

きれいに拭き取れました。

容器にゴムシートを貼る

容器とフタを密着させるためのパッキンとなる「ゴムシート」を寸胴鍋に貼り付けていきます。

ゴムシートは300×300の3mm厚のものをカッターで丸くカットしたもの。ホームセンターにて500円くらいで購入しました。

接着剤には金属・ゴムどちらでも使用できる万能タイプのものを使いました。他にもボンドのG17とかでもよさそうです。

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接着剤を薄く塗り拡げたらその上にゴムシートを貼り付けて

平な床に押し付けて接着されるのを待ちます。

ホースの加工

モノタロウで購入したホースですが、このままでは長いので使いやすい長さにカットしましょう。

一番先端のネジをはずしてやればホースをとることが出来ます。

短くなりました。

ついでに真空ポンプ側にもハイカプラを取り付けて、ホースと接続できるようにしておきましょう。

この真空ポンプには2種類のネジがついており、そのうちの1つ「PF1/4」のネジを使います。

購入しておいたPF1/4用のハイカプラを取り付けます。

だいたい完成

これで真空脱泡機の完成です。

それ以外に「これやっとくのオススメ」ってのがいくつかあるのでそちらも紹介しておきます。

スタイロフォームで容積を減らす

断熱材でもあるスタイロフォームを使って詰め物をすることで、デシケーターの容積を減らすことができます。

ちなみにスタイロフォームはレジン(ウレタン樹脂)が付着すると溶けてしまうので、表面をアルミテープで保護してやりましょう。

容積を減らすことで真空になるまでの時間を大幅に短くすることができます。


▲詰め物 無し 真空(-0.1Mpa)になるまでの時間


▲詰め物 有り 真空(-0.1Mpa)になるまでの時間

レジン注型をするなら、30秒前後で真空にできる環境を持っておきたいですね。レジンは硬化が始まるのも早いですし。

アクリル板の表面を保護しておく

レジンの付着の防止に、保護フィルムを張ってやりましょう。

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貼りつけているのはカッティングシートの転写で使う「アプリケーションフィルム」です。

アクリル板にレジンが付着して汚れてしまっても、フィルムを剥がして新しいものを張り替えてやれば綺麗にすることができます。

真空ポンプから発生するオイルミストの対策

私の購入した真空ポンプは作動時にオイルミストが出るので、室内で使うならそれなりの対策をしないといけません。

オイルミストに関する対策をネットで調べてみると「真空ポンプ本体をプラ容器に封印する」や「専用のオイルミストキャッチャーを取り付ける」などがありましたが、どれも自分にはピンときませんでした。

というわけで私は、雨どいのパイプを使ってオイルミストを野外に強制換気するための煙突を作ってみました。

真空ポンプが吸い込んだ空気も同じ箇所から吐き出されるため、オイルミストと吸い込んだ空気をまとめて外へ強制排気する仕組み。

これで部屋の床がオイルにまみれてツルツルになることはありません。

まとめ

というわけで真空脱泡機の紹介でした。

記事が長くなりましたので、真空脱泡機の使い方とか、真空型の作り方とか、注型の方法とかはまた別記事で説明していきたいと思います。

レジン複製でつかえる『真空型』の作り方を徹底解説!常圧型との違いは?

レジン複製でつかえる『真空型』の作り方を徹底解説!常圧型との違いは?

それでは。

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