ガンプラで使えるハンドパーツをデジタル造形で量産してみた

モデラー

  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

突然ですが、ガンプラに付属しているハンドパーツってデザインが微妙なものが多いと思わないですか?

値段もクオリティも高い、マスターグレートや、パーフェクトグレード、リアルグレードなんかはカッコいいハンドパーツが入っていますが、ハイグレードはどうでしょうか。

対象年齢が低いということもあり、凝ったデザインのハンドパーツがついてることはほぼありませんよね。クランシェ系やジム改とか一部例外はありますが・・・。

市販パーツでも、バンダイの「MSハンド」、コトブキヤの「ハンドユニット」、ホビーベースの「極め手」などがありますが、専用品ではないので使えるキットが限られてきます。

となると、やはり自作して用意するのが一番手っ取り早いですよね。

というわけで今回は、デジタル造形にてガンプラのハンドパーツを作ってみたいと思います!

ちなみに、アナログ造形でのハンドパーツ製作については『ガンプラのハンドパーツをエポパテを使って自作してみよう!』で紹介しています。

ガンプラのハンドパーツをエポパテを使って自作してみよう!

それでは続きからどうぞ。

ZBrushを使って原型データを製作してみよう

デジタル造形ということで、まずは原型となるデータの製作からはじめます。

3D造形ソフトにも色々なものがありますが、今回は使い慣れている『ZBrush』を使っていきます。

ここからはZBrushを使ったことがある方でしか理解できない解説になっていくと思います。ZBrush未経験の方はごめんなさい、「そうやって作ってるんだ~」程度に楽しんでいただければと思います。

基準となるデータの製作

まずはじめに、ハンドパーツの基準となるデータから作っていきましょう。

握り拳の形とか、武器の持ち手の形といった形状ではなく、なんの稼働もさせてない平手ですね。

今回作るのはガンダムOO系で汎用的に使えるデザインのハンドパーツです。第3世代のエクシア、デュナメスや、第2世代のアストレア、プルトーネのあれです。

手の平の制作

まず、HGシリーズのハンドパーツとして使えるようにするため、手首のボールジョイントのパーツから作っていきます。

HGのハンドパーツは基本的に3.5mmのボールジョイントが使わています。

サブツールに「スフィア」を新規作成、【Zプラグイン→スケールマスター】で3.5mmに大きさを変換します。

変換後は【Zプラグイン→3Dプリントハブ】からサイズの確認をしてみましょう。サイズ比の更新ボタンを押すと選択されているサブツールのサイズが表示されます。

なぜか3.5mmピッタリではないですが、まあ問題ないでしょう。

次に、手のひらを作ります。

先程と同じようにサブツールに新しく「キューブ」のオブジェクトを追加します。追加したオブジェクトは【ギズモ3D】を使って丁度いい大きさに変換しておきましょう。

このときサイズの目安となるハンドパーツが手元にあると作りやすいですね、私は1/144のガンダムOO系のHDM(ハイディティールマニュピレーター)を参考にサイズを決めています。

で、サイズ決めると言ってもZBrushは任意のサイズでオブジェクトが作るのは苦手な3Dソフトです。

ですので、オブジェクトのサイズを決めるときは、【ユニバーサルマニュピレーター】という機能使います。かなり多機能なツールなのですが、その機能の1つに「ものさし」があります。これを使ってサイズを測りながら大きさを決めます。

MEMO
ユニバーサルマニュピレーターってのはギズモ3Dが実装される前にあった昔の機能らしいですね。ギズモ3Dにした状態でキーボードの[Y]キーを押すことで切り替えができます。

キューブオブジェクトのサイズが決まれば、次にZModelerを使ってエッジの挿入をしていきます。【エッジアクション→挿入→複数エッジループ】を使って均等なエッジを入れます。

このエッジを基準にして、手のひらのブロックを切り出していきましょう。

続いてZModelerのコマンドを【ポリゴンアクション→押し出し】にして、押し出したいポリゴンをAltキーを押したままクリックして選択します。選択した部分のポリペイントは白色になります。

選択できたら押し出しましょう。

Altキーを押しながら押し出すと、板ポリゴンが作れます。できた板ボリゴンはデザインに合わせて形を整えておきましょう。

各パーツを【ツール→サブツール→シェルごとに分割】で別パーツ化します。別パーツにしたものに【押し出し】をして厚みをつけてやりましょう。

これで手の平のラフ造形は完了です。

手の指の制作

次は指です。

横1.7mm、縦8.5mmくらいのキューブを作ります。ここでも、ユニバーサルマニュピレーターを使って、適宜サイズを測りながら大きさの変更していきます。

作ったオブジェクトは4本に複製しておきます。

この大きさを基準に指のラフを作っていきましょう。

指が出来ました。

一番重要なところを飛ばしちゃいましたが、全部説明してると大変なので使ったツールだけ簡単に紹介しておきます。

  • 【サブツール→挿入】でスクエアのオブジェクトを新規作成
  • 【ZModeler】のコマンドから【エッジアクション→挿入→複数エッジループ】【エッジアクション→スライド】【ポリゴンアクション→Qメッシュ】を上手いこと使いこなして指のブロックを作成

こんな感じです。あんまり難しいことはしていません。

ZModelerが理解できない!って方は、ウチヤマリュウタ先生の『ZBrushフィギュア制作入門』や『ZBrushハードサーフェス制作入門』の参考書がオススメ。

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『ZBrushハードサーフェス制作入門』の方は、ZModelerの詳しい使い方がたくさん書いてあるすばらしい参考書なのですが「ZBrushを初めて使う」という超初心者の方には難しいかもです。ZBrushを少しだけ理解できてきたかな?くらいの中級者の方にはピッタリかと。

さてさて続きです。

4本ある指ですが、全てが同じ長さだと少々違和感があります。多少の人間味を付けるため「中指」「小指」の長さを変更してやりましょう。

ついでに、さらに短く加工した親指も作っておきました。

現状では指が手のひらに食い込んでしまってますが、指を稼働させた後で修正するので今は無視しておきましょう。

手の甲の制作

手の甲を作ります。

ガンダムOO系のハンドパーツの甲は少し特殊で、握り拳になったとき、手の甲も若干稼働するようなデザインをしています。

それを再現するため、前後2つのオブジェクトで手の甲のベースを作ります。

  • 【挿入→キューブ】でサブツールに新規オブジェクトを追加
  • 【エッジアクション→複数エッジループ】でエッジを増やして、【エッジアクション→スライド】でC面を作ります

あとは適当に【ポリゴンアクション→Qメッシュ】とかで押し出したり押し込んだりして形を作ります。

こまかいディティールを作り込みます。八角形のオブジェクトを新規で作り、手の甲のパーツにめり込ませます。

そしたら減算のブーリアン処理をして、重なっている箇所を削り取りましょう。

詳しいブーリアン処理の方法については「ZBrush ブーリアン」でググってね!

減算ブーリアン処理ができたパーツがこちら。

八角形のオブジェクトが重なっていた部分が削り取られました。ついでに4箇所にマイナスモールドも減算ブーリアンを使って入れました。

削った箇所に埋め込むパーツを作ります。

減算ブーリアン処理で使った八角形のオブジェクトを少しだけ小さく縮小したものを使い回します。

ただ、そのままでは単調なのでZModelerの【エッジアクション→ベベル】でC面を入れ、【ポリゴンアクション→Qメッシュ】で段落ちモールドっぽいスロープも作りました。

これでハンドパーツのラフ造形は終わりです。

関節を動かして表情を付けてみよう

関節を動かすのにはトランスポーズマスターという機能を使います。【Zプラグイン→トランスポーズマスター】から使えます。

簡単に説明すると、

  • Tポーズメッシュのボタンを押せば、別々のサブツールが1つのサブツールにまとめられます
  • Tポーズ|サブTのボタンで、統合されたサブルーツが別々のサブツールに分割されもとに戻ります

という機能です。

ようは、いちいち動かすパーツごとにサブツールを行ったり来たりしなくてよくなるってことですね、あと複数のサブツールを一緒に動かせたりもする。

トランスポーズマスターで1つのサブツールに分けたら【ツール→ポリグループ→自動グループ】でポリグループを分けましょう。

各パーツをポリグループに分けたら、動かしたいパーツを非表示(Shift+Ctrl+クリック)→全体マスク(Ctrl+クリック)→なにもないところで(Shift+Ctrl+クリック)で非表示解除で、動かさないパーツにマスクをかけます。

その状態から【ギズモ3D】を使ってパーツ単位で関節を動かしていき自然な表情を作ります。この作業は慣れるまで大変なので頑張って練習してください。

各パーツを動かして作った握り拳がこちら。

握り拳の表情については、市販のハンドパーツや自身の手なんかを参考に作っています。

パーツ数やポリゴン数を減らして扱いやすいデータサイズにする

このハンドパーツは複数のサブツールで作られているので、2パーツくらいにまとめてやりましょう。HGでいうところの、手と手の甲の2パーツ構成みたいな状態にします。

まず、サブツールを手と手の甲の2つにするため【ツール→サブツール→結合→下と結合】でまとめていきます。

結合を使ってハンドパーツを2つのサブツールにまとめましたが、まだパーツ同士は完全にくっついていません。

さらに完全な1パーツにするため【ダイナメッシュ】に変換します。

【ツール→ジオメトリ→ダイナメッシュ】の欄で、解像度のスライダーを64くらい設定にして、ダイナメッシュのボタンを押すとダイナメッシュの処理がされます。

このとき、ダイナメッシュが荒かったり細かすぎたりした場合は解像度のスライダをうまいこと調整しましょう。

ダイナメッシュに変換することで、結合したサブツールが完全に同化して、さらに不要な穴なんかも勝手に埋められます、3Dプリンタでプリントするときのエラーの予防にもなりますね。

デシメーションマスターでポリゴンを減らす

ダイナメッシュのままだとポリゴン数が多すぎて重いです。

なので【Zプラグイン→デシメーションマスター】でポリゴン数を減らしてやります。

使い方は、

  • 【現在のサブツールをプリプロセス】のボタンを押して、ポリゴン数を減らす処理をするための事前計算をさせます。
  • 【デシメーション率(%)】のスライダーを調整します。私の場合は1%くらいが丁度よかったです。
  • 最後に【現在のサブツールをデシメート】を押して、ポリゴン数を減らします。

この3工程をすべてのサブツールで行います。

一応、すべてのサブツールを一気に処理する【すべてのプリプロセス、すべてデシメート】のボタンもありますが、処理が重すぎるでオススメしません。

ポリゴン数を減らしたハンドパーツがこれ。

不要なポリゴンがなくなりました。

このデシメーションマスターの処理をしたあとはポリゴンが「三角ポリゴン」になり、このあとの造形作業が難しくなります。なのでデシメーションマスターは最後の工程でやりましょう。

すべての作業が終わったら、【Zプラグイン→3Dプリントハブ→STLへエクスポート】でSTLのデータとして出力しましょう。

バリエーションを作る

ハンドパーツを作る一通りの流れが理解できたら、表情の違う別のハンドパーツも作ってみましょう。

「握り拳」以外にも「平手」「武器の持ち手」など色々ありますね。

そういえば言い忘れていました、反転させたパーツの作り方ですが、

【ツール→サブツール→複製】でサブツールを複製して、【ツール→変形→ミラー】で反転させれます。これで左右のハンドパーツが用意できます。

3Dプリンタで印刷する

原型データが出来たら、サポートを取り付けて印刷してみましょう。

サポートの取り付けについては『『CHITUBOX』を使って原型データを出力用データに変換してみた。』の記事で解説しています。

3Dプリンターの操作に関しては、プリンターの機種ごとに違うので、各自所有しているプリンターの説明書に従ってください。私の使用している Phozen Shuffle XL についての記事は『3Dプリンタ『Phrozen Shuffle XL 』を買ったので動作テストしてみた』を読んでください。

まとめ

デジタル造形は、ある程度のレベルまで使えるようになるまでが大変で、さらに3Dプリンターなどの機材や3Dソフトも数十万円~と非常に敷居が高いものでした。

しかし、少し前まではそうだったかも知れませんが、今はどうでしょう?

無料で使える高性能な3DソフトのFusion360、Blenderもありますし、ソフトの使い方を指南してくれるサイトも数多くあります。3Dプリンターも、私の所有しているものと同レベルの精度が出せる光造形機が2万円代で売られてたりします。

デジタル造形を始めるのにはPCが一台あれば十分です。最初は原型データだけ作ってみて、データがちゃんと作れてから3Dプリンタを買うでもいいですし、始め方は色々あります!

デジタルでパーツが作れるようになると、自分が出来る表現の幅も広がりガンプラ製作がより楽しいものになりますよ。

それでも「デジタル造形はズルい」と敬遠してるモデラーが多いのも事実です、しかし確実にガンプラ界隈でも3D造形は流行ってきています。

手が出しやすくなっている今だからこそ、流行りに乗り遅れないよう3D造形はじめてみてはいかがでしょうか?

それでは。