レジン複製の粘土埋めで大切な『配置・レイアウト』についての基礎知識

モデラー

  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

この記事では複製の「粘土埋めでの配置・レイアウトの基本」について解説していきます。

複製する原型を粘土埋めする記事「フィギュア複製を徹底解説!ガレキの原型パーツを粘土埋めしてみよう!」も一緒に参考にしてみてください。

フィギュアでよく使われているシリコーン型のレイアウト

常圧型と真空型

まず始めに、自分が製作するシリコーン型のレイアウトについて知っておきましょう。

フィギュアなどの複製で作られている型には大きく分けて「常圧型」と「真空型」があります。(他にも”遠心型”などもあります。)

  • 「常圧型」は、レジンの圧力だけでパーツ全体に樹脂を流す方式です。基本的な形はメインとなる太めの湯口からレジンが通って、そこから枝分かれしている湯口から下から上へと樹脂が流れてパーツが整形されます。
  • 「真空型」は、真空槽、真空ポンプという大掛かりな装置が必要になってくる特殊なレイアウトです。上部に設けてある「プール」にレジンを流して、真空ポンプの力で強引にシリコーン型内の空気を追い出して一気にパーツを整形します。

この記事で解説していくのは、複製の基本中の基本である「常圧型」のレイアウトについてです。

複製の経験が無い方が「複製の上手な人の型を参考にしてシリコーン型を製作してみたが、実は真空型のレイアウトだったから使えなかった。」なんて事もあるので、このレイアウトの違いはよく覚えておいてください。

常圧型の基礎知識

常圧型は「メインの太い湯口からレジンを注いで、枝分かれさせた湯口を通って各パーツに、レジンが下から上へ流れる」という形をしています。(上の常圧型の図を参照)

シリコーン型以外に、特殊な機材は一切必要無いので最も簡単で手が出しやすいレイアウトだと言えますね。

常圧型にもいくつか特徴があります。注意しないといけないのが、メインの湯口から離れれば離れるほど圧力が弱くなっていく、という点です。

常圧型を作ったことある方なら、メインの湯口にレジンをいっぱいに注いでも「パーツに繋がっているはずの他の小さい湯口からはレジンが出てきてくれない。」という経験をしたことがあるかと思います。

だいたいの原因はここにあります。

たーぽんさんの失敗例

例えばこの型。

私のモデラー仲間である「えぽきしたーぽん。さん(@gunplatarpon )」のご厚意で提供していただいた、複製が失敗した時の写真です。

見事に湯口から離れていくにつれて上部のパーツに樹脂が届かなくなっているのがわかりますでしょうか。

この原因はメインの湯口の高さが足りず、パーツを流れる湯口の圧力が不足したから、というものです。

細かい事を言えば「湯口の高さ」以外にも、「パーツの大きさ」なり「湯口の太さ」なども挙げられると思いますが・・・

単純にパーツにつながっている湯口を太くするだけでも、道が太くなりレジンが流れる量も多くなる=パーツにかかる圧力も上がる という事もにも繋がりあっり問題が解決する場合もあります。

湯口への圧力不足の対策

常圧型の圧力不足の対策

湯口を太くする以外の対策としては、「上部にパーツを配置しない」というのと「湯口の高さを上げる」というものがあります。

対策1

対策1は、レジンが上まで上がらないのを前提とした型を作るという事です。1つのシリコーン型に配置出来るパーツ数は減りますが、最も理想的で安定した型になると思います。

対策2

対策2は、ストローなどを使用して湯口の高さを強引に上げる、という手段です。

1つのシリコーン型に配置出来るパーツ数が増えるというメリットがありますが、別途で専用のストローを用意しないといけなかったり、レジンを入れすぎると他の湯口からもレジンが溢れてしまう、というデメリットもあります。

「シリコーン型を小型にする必要が無い」「シリコーンをケチらなくても問題ない」という方は対策2より、「対策1」で型を作るのをオススメします。

レジン複製

そういう私はというと、加圧鍋を使った加圧脱泡をするので「シリコーン型を大きく出来ない」、シリコーン型にパーツをできるだけ多く配置して「量産時間の短縮」をしたいので、いつも「対策2」でシリコーン型を製作しています。

もちろん、「対策2」にする場合はシリコーン型の製作時に「ストロー」を差し込む専用の湯口を事前に作っておく必要があります。

レジン複製

そして、メインの湯口を高くしたぶん、どうしてもパーツ側の細い湯口からレジンが溢れてきます。

なので、写真のような小さいプール(レジンが溜まる溝)をシリコーン型に掘っておくことでレジンが漏れを抑えることもできます。

パーツの配置についての基本

全体のレイアウトについて理解したら、次にパーツの配置についての基礎知識です。

例として2つの形状のパーツを用意してみたのでそれを使って説明していきましょう。

四角いパーツの配置の基本

複製するパーツ

まずはこの「四角」のパーツから。

とても簡単に複製できそうですが、「湯口の位置」や「角度」に気をつけないと綺麗に複製はできません。

複製するパーツは少し斜めに

始めは悪い例から。単純に四角のパーツを垂直に埋めて、湯口をパーツの中心に配置した場合です。

シリコーン型が少しでもどちらかに傾いていたら、パーツの四角の角で空気が逃げられなくなりその部分で気泡が発生してしまうのがおわかりい頂けるでしょうか。

これでは気泡の無い綺麗なパーツを安定して複製できません。

では、どうするのが正解かと言うと

斜めにする

四角いパーツは基本的に「少し斜めにして配置」を心がけましょう。こうすることで空気が溜まる部分が無くなりパーツの隅々までレジンが流れてくれます。

「少し斜めに配置」は、シリコーン型に対して横方向でも同じことが言えます。すべての方向でパーツがシリコーン型に対して垂直にならないように粘土埋めをする必要があります。

「湯口」を設ける位置にも注目してみてください、湯口は斜めに配置したパーツの頂点につけるようにしょう。上部へ逃げてくる空気が逃げやすい位置をイメージしましょう。

これがパーツ配置の基本中の基本となります。次は少しだけ複雑な形のパーツで考えてみましょう。

【応用】複雑なパーツの配置の基本

複製するパーツ

このような複雑なパーツの配置について考えてみましょう。

フィギュアやロボットのパーツはこれ以上に複雑なものも多いです。しかし先程説明した基礎知識を応用すればしっかり配置できるはずです。

湯口の数を考えよう

【案1】

とりあえずそのまま配置してみました。湯口はパーツの一番上の頂点にしています。しかし、これだけでは2箇所ほど気泡が溜まる部分がでてきます。

こういう場合の対処法として「湯口を追加してやる」という手段があります。

気泡が溜まる=空気の逃げ場がない ということなので、「湯口を追加する」という事は「空気の逃げ場を作ってやる」という事に繋がります。気泡が溜まっている部分のパーツの頂点に湯口を追加してやれば解決します。

【案2】

今度はパーツを180度回転させて配置してみました。パーツの頂点に湯口をつけましたが、また同じ様に気泡が溜まる部分が出来てしまいました。

同じ様に気泡の溜まっている部分に湯口を増して解決しましょう。

 

このように、気泡が溜まってパーツの整形不良が起こってしまっても「空気の逃げ場」を作ってやれば複雑なパーツを綺麗に複製することも可能です。

しかし、湯口が増えるという事は、パーツの湯口処理の作業も増えるという事にも繋がります。湯口はできるだけ少なくしたほうが絶対に良いですよね。

湯口は少なく

なので、こんな配置を考えてみました。パーツを90度回転させて「空気の溜まる箇所」をできるだけ無くした配置をしてみました。

湯口は上下の計2箇所だけおさまっています。このように「気泡が溜まりにくく、出来るだけ湯口が少なくなる配置」をいかにして考えられるがパーツ配置のポイントとなってきます。

パーツの抜きの向きを考える

パーツ配置でさらに注意しないといけないのが「パーツの抜きの向き」です。

気泡が逃げやすい角度に配置するのも重要ですが、2面型で製作したシリコーン型から綺麗に離型できるように考えておくことも重要です。

画像で説明しているのは、コップのような「底のついた円筒形のパーツ」をシリコーン型で埋めたときの図。ちなみにこれはシリコーン型の横図になりますかね。

文章で説明するのは難しいので、このイメージだけで理解してくださると助かります。シリコーン型を開くときにパーツの凹みに干渉せずに開けるような配置が理想的です。

複数の湯口の道筋の基本

パーツにつながる湯口を作る道筋の基本は、「複数のパーツの湯口の出口を繋げない」です。

文字で説明してもわかりにくいと思うので、次の図を見てみましょう。

2つ以上のパーツの湯口の出口をつなげると”何が起こるか”という図です。

複製時、レジンが満たされるスピードはパーツの体積によって変わってきます。当然、体積が少ないパーツのほうが少ない時間でレジンが満たされるのは、なんとなく想像がつくと思います。

つまり、複数の湯口の出口が1本にまとまっていると、小さいパーツが配置されている湯口はレジンが早く上がってくるので、体積の大きいパーツの湯口をレジン液で塞いでしまう、という事です。

湯口を塞がれた大きい方のパーツは、空気の逃げ場がなくなりそのまま整形不良となることが多いです。

粘土埋め

「湯口の道筋は増やしてもいいが、出口でまとめてはいけない。」という事を忘れなければ、そこまで難しい事ではありませんね。

このように、シリコーン型ひとつ作るのでも色々と気をつける点が多いです。

しかし、常圧型の基本的なルールを抑えてしっかりと粘土埋めをしていけば、ある程度の複雑な形状にも対応できると思います。この記事を参考に失敗しないシリコーン型を作ってみてください。

まとめ

シリコーン型での複製で一番大切なのが「粘土埋め」の工程です。この粘土埋めの工程で、パーツ配置やレイアウトを適当にやってしまうと、その後の工程が全て完璧でも良いパーツは複製できません。

私も「どんな方向で」「どのパーツと一緒に配置するか」など、パーツごとに理想的な配置を考えるのに半日くらい考える事もあります。それくらいパーツの配置・レイアウトは重要です。

三次元的にパーツを理解して配置を考えなければいけない、というとても難しい作業にはなりますが、粘土埋めの基本を知りゆっくり考えれば理想的な配置も見えてくるはずです。

それでは。

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