レジン複製で使える『引き裂き型』の作り方とは?引き裂き型で起こりがちな型ズレを無くす小技も紹介!

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  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

この記事ではシリコーンゴムを使用して製作する「引き裂き型」について詳しく解説していきます。

ガレージキットの量産作業以外にも、パテやプラ板などの複合的な素材作った原型をレジンに置き換えたりするのにも便利な手法ですので、是非チャレンジしてみてください。

解説中かなり専門的で難しい話も入ってきます。ですので、事前にある程度のシリコン型についての知識を身につけておくと記事の内容をスムーズに理解しやすくなると思います。

それではどうぞ

引き裂き型とは?

シリコーンゴムを使用して作るシリコン型の種類の一つで、内部に埋め込んだ原型をシリコン型を引き裂いて製作するところから『引き裂き型』なんて呼ばれている型です。

特徴として

  • 型の完成までが早い
  • 粘土埋めの工程が無い
  • シリコーンゴムを1度しか流さなくていい

なんかがあります。

型が出来上がるまでのスピードが早いため、パテやプラ板で作った原型をレジンで置き換える2次原型の製作に使われたり、2つ以上必要なオリジナルパーツを作るときなんかにもよく使われていますね。

引き裂き型はガンプラ改造でも有効に使えます。複数個必要な自作の改造ファンネルの複製や、左右対象のパーツを用意したいときにピッタリですね。

使用するシリコーンゴムの紹介

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引き裂き型の製作工程の中に「内部に埋めた原型をナイフで引き裂いて取り出す」という工程がありますので、使用するシリコーンゴムは中の原型が見えやすい透明のものを選びましょう。

この記事で使うのは造形村の透明シリコンです。最近はヨドバシカメラでも取り扱いが始まって更に手に入れやすくなりましたね。

透明シリコンは通常のシリコーンゴムより値段が少しだけ高いです。「複製する原型は簡単な形状だし、シリコンの内部が見えなくても俺は綺麗に引き裂けるぞ!」という自信ニキなら、不透明のシリコーンゴムを使っても引き裂き型を作れないことはないでしょう。

実際に、私も何度か普通のシリコンで挑戦したことがありますが意外となんとかなりました。シリコーンゴムを流す前にパーツの向きなどのメモをとっておけば失敗も少なくなります。

紙コップを使った引き裂き型の製作方法

さて、文章で長々と説明するよりも写真を見てもらったほうが理解も早いと思いますので、早速作り方の解説していきましょう。百聞は一見に如かずってやつです。

まず始めは、一番簡単な『紙コップを使用した引き裂き型』の作り方について説明していきます。

まず複製したい原型に湯口を作ってやりましょう。

ここから作っていく型はトップゲート方式(真空注型専用の型)ですので、パーツの一番高いところに1.5mmのアルミ線を差し込んで湯口を作ってやります

トップゲート型の仕組みについては『レジン複製でつかえる『真空型』の作り方を徹底解説!常圧型との違いは?』で詳しく解説しています。

このトップゲート方式の型は真空注型機を持ってなと使えませんが、機材を持ってない方でも使える『常圧用の引き裂き型』の解説も最後にするので、とりあえず読んでってください。

アルミ線を差し込んだら、原型から外れないよう接着剤で固定しておきます。

割り箸を紙コップの縁に渡して、湯口を取り付けた原型を吊るします。

このとき、原型は紙コップの側面に接触しないように配置してください。

内部の状況が見えやすよう、紙コップを縦にカットしてみました。紙コップと原型が接触してないですね、これでOKです。

位置が決まったら余っているアルミ線を割り箸に巻きつけて固定します。

これでシリコーンゴムを流す準備は完了です。

透明シリコンを用意しましょう。

同じ紙コップを使えば、使用するシリコーンゴムの量が直感的に分かるのでオススメ。

先程製作した原型&紙コップに、透明シリコンを流し入れましょう。

透明シリコンは硬化するまで24時間かかります。忘れないよう紙コップに日付と時間を書いておきます。

硬化したシリコン型を引き裂く

透明シリコンが硬化したら、紙コップを破壊して中身を取り出します。

見事に紙コップの形状になってます。このテーパー形状が引き裂き型にはいいんですよね。

透明シリコンに埋め込まれている原型がうっすら見えますので、原型の位置を確認しながらナイフで引き裂くラインを決めてやりましょう。

引き裂くのに使うナイフはこの3種類。

メインで使うのは通常のデザインナイフ。替刃は通常よりも長めに出して固定しています。

さらに深く奥まった箇所には、柄が薄いフェザーのメスや、普通のカッターナイフの刃を伸ばして使ったりします。

切りはじめは湯口の根本からです。

一直線に切り込みを入れて原型を救出してやりましょう。

無事に原型が取れました。

この引き裂いたラインが型の分割線(パーティングライン)となりますので、複製パーツにも反映されます。カットラインは慎重に決めましょう。

あと、シリコン型を引き裂くとき完全に引き裂いて2つの型にするのではなく、割った左右の型を一番下で繋げておくようにすれば後々の取り扱いが楽になります。

これで引き裂き型は完成です。

レジンを流す

それではレジンを流してみましょう。

レジンを流すときも型枠として使用したのと同じ紙コップを使います。

紙コップのテーパー形状に型を差し込むことで、引き裂いた箇所が同じ位置でバチッと合うわけですね。

この上からレジンを流し込んで真空注型してやります。紙コップの縁があるのでレジンをそのまま流し込むだけでOK。

レジンを真空注型してやれば綺麗な複製品の出来上がりです。

方眼紙を使った引き裂き型の製作方法

続いて、方眼紙を使った引き裂き型の作り方についてです。

「複製する原型が紙コップに入らない!」とか、「小さいパーツ複製するのに紙コップじゃ大きすぎる!」という場合は、方眼紙使った引き裂き型の製作がオススメ。

シリコーンゴムを流すための外枠を方眼紙で作る方法ですので、パーツ形状に合わせた自由なサイズの型が作れます。無駄に大きい型が出来たりする心配もないので、シリコーンゴムの節約にもなりますね。

まずは、先程と同じように湯口を作るところから。

湯口を作ったら、方眼紙の上に原型を仮配置してみましょう。ここで型枠の底面の大きさを決めてやります。

底の大きさを決めたら、続けて型枠の側面にあたる壁の高さを決めます。

シリコーンゴムがこぼれないよう、側面は長めに作っておきましょう。

そしたら方眼紙をカットします。長方形の箱状の展開図を作るイメージですね。

方眼紙の底面に、原型の湯口を固定してやります。

粘度高めの瞬間接着剤でガチガチに固めてやれば、1.5mmのアルミ線でも原型を自立させることができます。

湯口の接着が終わったら、原型の位置を確認してみましょう。

紙コップの引き裂き型と同様に、型枠の側面と原型が接触しないように湯口のアルミ線を曲げて位置の調整してやります。

そしたら方眼紙を箱状に組み立て、透明シリコンを流します。

透明シリコンがもれないよう、テープを使ってしっかりと組み立てましょう。

透明シリコンを流して、硬化させたものがコチラ。

それでは透明シリコンを引き裂き、原型を取り出して使える型に仕上げていきましょう。

シリコン型を引き裂く

方眼紙で引き裂き型を作る場合のカットラインは『波状』にします。

紙コップで作った引き裂き型では容器のテーパー形状が型ズレを防止してくれていましたが、方眼紙で作る引き裂き型ではそうはいきません。

ですので、カットラインを波状にすることで型ズレを防止するというわけです。

慣れるまで綺麗に波状カットするのは難しいと思いますが頑張ってみてください。

原型が取り出せたら、引き裂き型の完成です。

レジンを流す

レジンを流すときは、シリコン型の周りをテープで巻き、適当にプールを作ってやります。

それからレジン注型中に引き裂いた箇所が開かないように、マスキングテープや輪ゴムで固定もしておきましょう。

あとは紙コップのときと同じ要領で、真空注型を使ってレジンを流してやれば終わりです。

綺麗に出来ました。

引き裂き型を極める

ここからは更に手の混んだ引き裂き型の作り方について紹介していきます。

ひと手間加えるだけで、より精度が高く扱いやすい引き裂き型を作ることが出来ます。

位置決めピンを使った引き裂き型

方眼紙で作る引き裂き型では、型を合わせる位置決めが難しいため、カットラインを波状にする必要があります。

しかし波状カットでは、自分の狙ったラインで型を分割するのが非常に難しくなってきますよね。

ならば、引き裂き型でも2面型のような『位置決めをするためのダボ』があればいいのでは?

というわけで、3mmのプラ棒を何本か用意して、引き裂き型に位置決めピンを設けてやりましょう。

プラ棒を方眼紙の側面に接着剤で取り付けてやります。

このとき、型を引き裂く方向を意識して配置しましょうね。プラ棒と引き裂く方向が垂直でないと何の意味もありませんので。

位置決めのピンは原型に接触しないように配置してやります。

この状態でゆっくりと透明シリコンを流し込みます。

シリコン型を引き裂く

透明シリコンが硬化しました。引き裂く前に位置決めピンを抜いてやりましょう。

位置決めピンを抜いたら、まっすぐカットラインを入れ型を引き裂いてやります。カットラインを波状にする必要はありません。

原型が取り出せたら位置決めピンを再度差し込んでやり、型を合わせてやります。

あとは同じです、型にテープを巻いてプールを作り、レジンを流せばOK。

波状カットをしていない引き裂き型ですが、位置決めピンのおかげで型ズレがほとんど無い綺麗な複製品ができました。

常圧でも使える引き裂き型の製作

おまたせしました。

この記事を読んでる大半が「真空脱泡機なんて持ってねーよ!」って方だと思いますので、そういう人に向けた引き裂き型の作り方も紹介したいと思います。

常圧でも使える引き裂き型の作り方は超簡単です。湯口の形状を常圧型の形に変えてしまえばいいだけです。

まず、湯口について。

湯口は常圧でも流れやすいよう2~3mmの太めのアルミ線を使用しましょう。

常圧型と同じように、レジンが下から上へ上がっていくようなレイアウトを目指したいので、入り口にはアルミ線をU字に曲げたものを使用、片側に原型を取り付け、出口側の湯口にはアルミ線と6mmのプラ棒を合体させたもの取り付けて、常圧型のレイアウトを作っています。

これを方眼紙で製作した型枠に配置します。

ついでに先程紹介した位置決めピンも一緒に配置してやります。

そして透明シリコンを流して硬化を待ちます。

硬化したら、位置決めピンを抜き、型をナイフで引き裂いて原型を取り出します。ここまでの流れは今までとほぼ同じですね。

これでシリコン型自体は完成ですが、もうひと手間。

このまま先程と同じようにプールを作ってレジンを流し込んでしまうと、レジン液で湯口の出口と入り口どちらも同時に塞がってしまいます。

常圧型がきちんと機能するための「レジンの入る入口」と「空気が逃げる出口」の療法が塞がってしまったらレジンは型の内部に流れなくなります。

なので、空気の逃げ道となる出口に『Φ6mmのストロー』をさしこんで、レジンが出口を塞がないよう対な策をしておきましょう。これをするため事前に6mmのプラ棒を湯口と一緒に埋めていたというわけです。

完成した型がこちら。

プールに溜まったレジンは入り口からのみ入ります、空気の出口にはストローが刺さってるのでレジンは侵入できません。

これで常圧型でよく見る、レジンの「入口」と空気の「出口」があるレイアウトが作れました。

テープで囲って作ったプールにレジンをドバッと流し込み、出口からレジンが上がってくるのを待ちます。

レジンを硬化させたものがコチラ。今回は2mmのアルミ線の湯口かつ常圧複製だったので少々不安でしたが、レジンも普通に流れてくれましたね。成功です。

今回の原型は単純な形状だったので比較的簡単でしたが、原型が複雑な形状になればなるほどこの方法は難しくなってきます。

この方法は、通常の2面型のように後から湯口の本数を増やしたりといった手直しが出来ないため、常圧型のパーツ配置経験がそれなりにないと失敗しやすいでしょう。

しかし、常圧型の経験がそれなりにあり、私の雑な解説でも仕組みを理解できた人なら何も問題ないと思います。是非挑戦してみてください。