みなさんは、雑誌などに掲載されている綺麗なガンプラが、どのように作られているかご存知でしょうか?
ネットや模型誌などで掲載されている、綺麗なガンプラの完成品ってとても魅力的ですよね。
しかし、プラモデルを普通に組み立てただけでは、あのような綺麗な仕上がりにはなりません。
ガンプラを綺麗に仕上げるためには、パーツをヤスリで磨いたり、エアブラシをつかって塗装をしてやる必要があります。
このような製作方法は「全塗装(ぜんとそう)」と言われており、プラモデル特有のプラスチック感を無くしたり、改造したパーツが周りに馴染ませたり、オリジナリティーのある作品に仕上げるための技術です。
全塗装のやり方は色々ありますが、この記事では「エアブラシ」という塗装用の機材を使用したやり方について詳しく紹介していきます。
ここでは例として、「組み立て」「基本工作」「表面処理」を済ませたガンダムアストレアのガンプラを用いて解説をしていきます。
目次
塗装前にパーツを洗浄しよう
組み立てた後のパーツの表面には、手で触ったときに付いた油脂汚れや、製造工程で付く離型剤などが付着しています。
このような汚れがあると、上から塗る塗料を弾いてしまう原因の1つになります。
なので塗装前のパーツは、塗装前に水洗いして汚れを落としておきましょう。
洗浄するパーツは、洗いやすいサイズまで分解しておき、パーツがシンクに流れて無くならないよう「洗面器」や「ザル」を活用しながら慎重に作業をしていきます。
洗浄作業で使用する洗剤はプラスチックを傷めにくい「食器用洗剤」などがオススメです。
汚れを擦らず落とせる泡タイプは、弱アルカリ性なので油性の汚れに強いです。
手の油脂や離型剤程度なら、洗剤をつけるだけで割と落とせます。
ここでは、ヤスリで削ったときに出る「削り粉」も綺麗にしたいので、すべてのパーツを歯ブラシを使って丁寧に洗っていきます。
パーツを洗ったら水で洗剤を落とします。パーツをシンクに流さないよう注意してくださいね。
ザルがあれば「洗浄」「水切り」の作業が楽に出来ますね。小さいパーツが網目から落ちないよう、目の細かいザルが用意できてれば最高です。
十分に水で洗剤をすすげたら乾かします。
パーツの下に「新聞紙」や「キッチンペーパー」を敷いておくと、パーツ表面の水分を吸収して乾燥までの時間が早くなります。
サーフェイサーの塗装
パーツに色を塗る前に「サーフェイサー」という塗料で下地塗装をしていきます。
サーフェイサーって何?という方は、知らずに使ってない?サーフェイサーを塗装することによって得られる効果とはの記事を読んでみてください。
プラモデルのサーフェイサーとは?塗装することによって得られる効果を詳しく解説サーフェイサーを塗装してみる
サーフェイサーの塗装前に、パーツの可動部をマスキングテープで養生しておきましょう。
可動軸に塗料が付いてしまうと、塗膜の厚みで軸が太くなり、塗装後に組み上がらなくなったり、関節が固くなりすぎてパーツが破損してしまう恐れがあります。
軸にマスキングができたら、「塗装ベース」にパーツを固定して、サーフェイサーを塗装していきます。
ここで使用してる塗装ベースは自作したもので、【ガンプラ塗装で役に立つ「塗装ベース」と「持ち手」を自作してみた。】の記事で紹介しています。
傷の確認
サーフェイサーを塗装したら「パーツ表面の傷」を確認してみましょう。
パーツがライトグレーに塗装されることで、作業中には気づけなかった「ヒケ」や「ヤスリの傷」が発見しやすくなります。
傷が見つかった場合は、目の細かいヤスリ(800番程度)で磨き直してやりましょう。
あたりまえですが、パーツにヤスリをかけるとサーフェイサーも剥がれるので、その場合は再度塗装し直してやりましょう。
この確認と修正作業を全パーツで行い、すべての傷や粗が目立たなくなればサーフェイサーによるキズ埋めの作業は完了です。
塗料をエアブラシで塗装する
サーフェイサーを塗装したら、次は「本塗装」に入りましょう。
今回は全塗装なので、すべてのパーツを塗装していきます。
使用する塗料について
今回はGSIクレオスが販売している「Mr.カラー」というラッカー系の塗料を使用します。
ラッカー塗料の種類については【プラモデルの塗料の違いをメーカー別に比較!「ラッカー塗料」編】の記事で紹介しているので参考にしてみてください。
色ごとにパーツを分解する
色ごとにパーツを分解してやります。
このキットの場合は、
- ホワイト
- グレー
- ブルー
- レッド
この4色が使われていました。
色ごとに分解したしたパーツは、再度「塗装ベース」に固定しておきましょう。
塗料の調色をする
瓶に入った塗料の色をそのまま使用してもいいのですが、せっかくなので「自分の理想の色」を作ってみましょう。
同じラッカー系の塗料なら「混色」が可能です。
例として、赤色で混色で使用した塗料を紹介しておきます。
- MSシャアピンク:40%
- 蛍光レッド:40%
- クールホワイト:20%
調色するときは、「塗料皿」「調色スティック」を一緒に用意しておくと便利に使えるでしょう。
エアブラシを使用して調色した塗料を吹き付ける。
調色した塗料はラッカー系のうすめ液で約3倍くらいに希釈してからエアブラシで使用します。
エアブラシの詳しい使い方については【プラモデルの塗装で役立つエアブラシの基本的な使い方を解説!塗装作業から洗浄まで】の記事で解説しています。
また、室内でエアブラシを使用する場合は「塗装ブース」があると便利です。
オススメの塗装ブースはフィギュアやプラモデルの塗装で使える!「塗装ブース」 を徹底比較!オススメは?の記事で紹介しているので参考にしてみてください。
先ほど調色した赤色の塗料を塗り終わったあとは、次の違う色を塗るためにエアブラシを洗浄してやりましょう。
エアブラシの洗浄方法は【エアブラシの洗浄方法!「うがい洗浄」から「分解洗浄」のやり方を徹底解説!】の記事で紹介しています。
エアブラシの洗浄方法!「うがい洗浄」から「分解洗浄」のやり方を徹底解説!エアブラシの洗浄が出来たら、同様の手順で塗料を調色し、「ブルー」→「グレー」→「ホワイト」の順でパーツを塗装していきましょう。
パーツを塗り分ける「マスキング作業」
続いて、マスキングテープを使ったパーツの色を塗り分けにチャレンジしてみましょう。
例えば、胴体の側面に付くこちらのパーツ、1つのパーツの中にブルーとグレーの色が混在しています。
こういった、これ以上パーツを分解できないパーツには、「マスキングテープ」を使用して塗り分けてやる必要があります。
使用するマスキングテープは、ホームセンターでも購入できる「3M塗装用マスキングテープ」がオススメです。模型店で売られてるものだと「タミヤ マスキングテープ」がいいですね。
手順としましては、はじめに「ブルー」の塗装をしてやり、塗装が乾燥したあと「ブルー」を塗装した一部分をマスキングテープで覆って「グレー」の塗装をしてやります。
マスキングを楽に行うコツとして、カッターマットにテープを出しておき、それをカッターナイフで任意の大きさに切り出して、ピンセットで1枚づつ剥がして使います。
貼り付け作業には「ピンセット」や「爪楊枝」を上手に活用して、細かいマスキング作業に対応しましょう。
カットしたマスキングテープは、塗り分けのラインに合うよう何回かに分けて貼り付けます。
境目の以外も、露出している「ブルー」の面をすべてテープで覆います。
マスキングテープの貼り付けが完了したら、グレーの塗装をしてやります。
塗装が完全に乾いたらマスキングテープを剥がしてみましょう。
ブルーとグレーで綺麗に塗り分けられていたら成功です!
スミ入れ作業
スミ入れのには、「ガンダムマーカーを使用したスミ入れ」「エナメル塗料を使用したスミ入れ」があります。
ガンダムマーカーのスミ入れペンについては【ガンプラ製作で使われている「スミ入れペン」の種類と使用方法を徹底解説!】の記事をご覧ください。
ガンプラ製作で使われている「スミ入れペン」の種類と使用方法を徹底解説!今回はラッカー塗料で塗装をしているということもあるので、タミヤのエナメル塗料を使用したスミ入れがオススメです。
エナメル塗料を使用したスミ入れについての詳しいやり方については【ガンプラ初心者でもできる!エナメル塗料を使ったスミ入れのやり方を徹底解説!!】記事を参考にしてみてください。
エナメル塗料を使ったスミ入れ方法を徹底解説!ガンプラからスケールモデルまでデカールの貼り付け
情報量を増やすためには「水転写デカール」と呼ばれる、特殊なマーキングシールが有効です。
水転写デカールは、ガンプラに付属していることがあまりないので、サードパーティ製のデカールを使うことが多いです。
水転写デカールの貼り付けは少しだけ難易度が高めです。
水転写デカールの正しい貼り方については【もう失敗しない!ガンプラ初心者でも出来る「水転写デカール」の上手な貼り方とは】の記事で紹介しているので読んでみてください。
デカールを貼り終えました。
各パーツの情報量・密度感が増してよりカッコよくなりましたね。
しかしこのままだと、デカールが剥き出しの状態で剥がれやすく、元パーツとの艶が違いにも違和感があったります。
というわけなので、「トップコート」を塗装して、デカールの保護や、パーツの光沢感を整えてやりましょう。
ツヤ消しトップコートで艶を整えてみよう
これまで作業してきたすべてのパーツに「トップコート」というクリアー塗料を塗装してやります。
「トップコート」には、パーツ表面の艶を整えたり、塗装したパーツ表面やデカールを保護するといった効果を持っています。
スプレー缶タイプや、瓶タイプ(エアブラシで使用するには薄め液で希釈する必要がある)があるので自分の用途に合わせて使い分けましょう。
今回はエアブラシを使ってMr.カラーの「スーパークリアーつや消し」を塗装してやります。
詳しいトップコートの効果については【ガンプラの塗装でよく耳にする「トップコート」とは?その効果と使用方法の解説】の記事で詳しくまとめております。
プラモデルでの「トップコート」塗装の効果とは?特徴や使用方法について詳しく解説!トップコートの種類については【これでアナタもつや消しマスター?つや消しのトップコートの種類と質感を徹底比較してみた。】の記事で比較しているので選ぶ参考にしてみてください。
プラモデルをつや消しにしてみよう!トップコートの種類と質感を徹底比較してみたというわけで、つや消しクリアーを塗装してみました。
サーフェイサーを塗装した時と同じように、作業しやすい大きさまでパーツを分解すると作業をスムーズに進められます。
塗料が乾いたらパーツ表面を確認してみましょう。
塗装したパーツのツヤが消えていれば成功です!
特殊な粘着フィルムを使用してアクセントを入れてみる
最後に、各部の「センサー」「ケーブル」が露出している箇所に、特殊な「ホログラムフィルム」を貼り付けてアクセントを追加していきましょう。
ハイキューパーツで販売されている「オーロラ・ミラージュシール」というアイテム。超極薄のフィルム状のシールで、貼り付けた箇所を簡単に「オーロラ調」に変化させることができます。
光の向きや加減で反射する色が「赤」や「緑」という様々な色に偏光するので、貼り付けた箇所が華やかになりますね!
ガンプラでは、頭部のセンサー、武器の標準器のレンズなんかの光学系のパーツに貼り付けるとそれっぽく仕上げられます。
このキットの場合は、「GN粒子を運ぶエネルギーケーブル」にオーロラ・ミラージュシールを貼り付けてみました。
フィルムを貼り付けることで、ボディの装甲とは違う質感になり「別の素材が使われているんだな」という説得力を演出できます。
頭部のセンサーや、バーニアスラスターにあたる部分にも特殊シールを貼り付けていきます。
こちらのシールもハイキューパーツの「スリット入りメタリックシール」です。
貼り付けるパーツ形状に合わせてシールを切り抜いて使用していきます。
ガンダムOOの設定では、このようなダクトからGN粒子が放出されるという設定なので、ここにメタリックシールを貼り付けておけばそれっぽく仕上がるかな?という思惑で貼り付けてみてます。
横に細かく入ったスジもいいアクセントになってくれてますね。他にも頭部のセンサーにもこのシールを貼っていきましょう。
メインカメラと、ツインアイにもメタリックシールを貼り付けてみました。
メタリック系の塗料では再現できない質感も、メタリックシールを使えば簡単に再現することが出来ますね。
ガンダムアストレア 完成
これにて「全塗装をしたガンプラ製作」は終了です。
ガンプラを全塗装で完成させるには、かなりの時間と根気が必要ですし、面倒くさい工程も多いです。
さらにエアブラシなどの工具を揃えるのにも、それなりの初期投資が必要になるのでハードルが高いと感じる方も多いと思います。
しかし、一度経験してしまえば「全塗装」も意外とどうてことなかったりします。むしろガンプラを全塗装しないと満足できない体になります。
この記事が「全塗装をしてみたいけどやり方がわからない」「どういう工具、塗料が必要か分からない」といった方の始めの一歩を踏み出す助けになれば幸いです。
それでは。
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