フィギュアの原価っていくらなの?ワンフェスで売られているガレキの値段が本当に高いのか作ったフィギュアで計算してみた。

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  • 柚P

 

こんにちは。柚P(@yzphouse)です。

この記事では、「イベントで売られているガレージキット(フィギュア)の原価」について書いてみようかと思っております。みなさんは気になりませんか?私は気になります。

イベント原型を自分で作られている人は、なんとなくどのくらいの費用がかかるのか分かっていると思うので、どちらかと言うと「イベント原型を作ったことない人・これから挑戦しようと考えてる人・何も知らない人」に向けての記事にできたらなと思っております。

ガレージキットの原価はいくら?

ここでは私が今回のイベントで製作した、少女終末旅行という作品の「チト」「ユーリ」のガレージキットを元に計算していきます。参考に2体のフィギュアの大きさとパーツ数を書いておきます。

  • 「チト」が、高さ210mm、パーツ数:16
  • 「ユーリ」が高さ220mm、パーツ数:21

パーツ数は少ないですが、サイズが200mmオーバーとかなりデカイです。市販されている1/7スケールの商業フィギュアより頭一つ分くらい大きいかな?

このくらいの大きさフィギュアを作るのに一体どれくらい掛かったのか、「原型製作費用」「複製費用」「WF参加費・交通費」に分けて計算していきましょう。

原型製作に使った材料費

  • タミヤ速乾エポパテ(1,500×2=3,000円)
  • ウェーブ軽量エポパテ(1,000×4=4,000円)
  • マジックスカルプ(2,700円)
  • 針金(100円)
  • ナイフ替刃(500円程度)
  • 紙やすり類(2,000円)
  • デコマス製作用塗料(2,500円)
  • 展示代(ベース1,000円 木ニス800円 テクスチャ塗料=2,800円)

合計17,600円

いきなりですが原型を作るために使った材料です。ざっとこんな感じ。

フィギュアの原型(複製前のオリジナル)を作るやり方には色々ありますが、私はアルミ線をベースにエポキシパテを盛り付けて造形をします。

使ったエポキシパテは「タミヤ速乾、ウェーブ軽量、マジックスカルプ」の3種類です。意外とたくさん使いました。

それ以外の造形で使用した「工具」「マテリアル」は、新規で買ったもの意外は入れていません。超音波カッターとかスパチュラとか色々ありますが、全部入れてたら大変な値段になるので・・・。

原型を製作する以外には、塗装見本を作るのに使用した塗料や展示台の製作に掛かった費用があります。

複製に使った材料費

  • ほいく粘土(215×6=1,290)
  • シリコーン代(旭化成ワッカーシリコン 8kg 20,920円)
  • レジン代(RCベルグ2kg 4104円 RCベルグ8kg×2 23,328円 里見デザイン4kg 6,660円)
  • レジン用離型剤(3616円)
  • ウェーブシリコーン型用ダボピン(600円)
  • ウェーブキャスティングウォール(2,300×2=4,600円)
  • MDFボード(900円)
  • 輪ゴム(600円)
  • キッチンペーパー(298円)
  • 100円ショップ複製グッズ(100×22=2,200円)

合計69,116円

続いて、フィギュアの原型を複製するのに掛かった費用です。主にシリコーン代やレジン代になりますね。

▼複製が何なのかよく分からない方はコチラの記事を参考にしてみてください。複製がどんなものなのかなんとなく分かると思います。

フィギュア複製を徹底解説!ガレキの原型パーツを粘土埋めしてみよう!フィギュア複製を徹底解説!シリコンを使ってレジンを流す型を作ってみよう!

今回使用しているシリコーンは「旭化成ワッカーシリコンM8012」というモノなんですが、こいつを簡単に説明すると「コスパ高い代わりに30個ぐらいしか複製できない」という性能のシリコーンです。

「旭化成M8012」は少量複製の一般向け用というシリコーンですね。チトとユーリは、お互い20個づつの複製&販売の予定だったのでこのシリコーンを選択したわけです。

それ以上の数を複製したい場合は、もっと耐久性の高い「RCベルグ ダウ#3498#8000」とかを使います。コチラは1kgで4000円くらいのシリコーンです。これだけで値段がグッと上がります。

レジンは20kgほど使いました。レジンというのはシリコーン型に流す樹脂ですね。このレジンという樹脂が固まってパーツになります。

その他は、輪ゴムやクランプに使うMDFボードなど複製に使用する道具たちです。

ここでも、既に持っていた「加圧脱泡機」や「量り」などの複製に必要な道具は費用には入れていません。

ワンダーフェスティバルに参加する費用

  • 卓代31,500円(三人で参加したので10,500円/人)
  • 版権料 0円
  • 自宅~飛行場までのバス代(往復2,200円)
  • 広島空港~羽田空港 29,000円(飛行機往復&初日ホテル代)
  • 羽田空港~海浜幕張(片道1,150円)

合計44,000円

最後に、ワンフェスに参加するために使った費用です。参加費(卓代)とか交通費とか。

ワンフェスの参加費は、「卓代」といって1テーブルで計算されます。費用は1テーブルで3万円ほど。1つの机にはMAXで3人が参加できて人数が増えるほど1人あたりの負担は減ります。

逆に1人で参加すると、3万円の卓代が全部自分に降りかかります。なので、できるだけ知り合いとかの卓に相乗りさせてもらい、卓代の節約に務めるわけです。

私の場合はWFで知り合った、うるにうさんの「水色病」という卓に参加させてもらってます。私含めて3人での参加なので卓代は3で割って10,500円です。

それ以外は交通費と宿泊費ですね。私が住んでいる場所は広島なので、そこからワンフェスの会場となる海浜幕張駅までが移動費となります。

飛行機の往復チケットと初日のホテルは旅行会社のツアーパックで取ったので、まとめて29000円と書かせてもらってます。

それから、作るアイテムによっては版権元に提出する「サンプル」や「版権料」が掛かってくるものがあります。版権料は販売個数の売上より「数パーセント」という計算で出されることが多いです。

例えば、版権料が5%のアイテムを8,000円で40個売った場合は

320,000円×0.05=16,000円

つまり16,000円を版権元に払わないといけません。そしてコレは売れても売れなくても全額払わないといけません。

ちなみに私が今回作った少女終末旅行のキットでは、版権料は無い代わりに「塗装済み完成品を2つ納品」というものでした。なのでここでは「版権料」という費用は入れていません。

ガレージキットを売った純利益はいくらになったのか?

あとは「いくら使って」「いくら売上たのか」で純利益を出していきます。

掛かった費用

  • フィギュア原型製作費用 合計17,600円
  • フィギュア複製費用   合計69,116円
  • イベント参加費・交通費 合計44,000円

合計:130,716円

なんと13万です・・・。売れるか売れないか分からないようなフィギュアを原型師の方々は、イベント前にこれだけの大金をつぎ込んで作っているわけですね。

しかも私の場合は、イベント参加も初めてではないので道具とかある程度揃っていてこの金額ですから「イベント初参加」とか「複製初挑戦の人」ならもっとお金がかかると思います。

今回の私の売上ですが

キットの売上

  • 「チト」8,000円 20個 → 完売!(160,000円)
  • 「ユーリ」8,000円 20個 → 完売!(160,000円)

合計:320,000円

こればっかりは購入して頂いた方々、本当にありがとうございます。8,000円のガレージキットを2人合わせて40個すべて売り切ることが出来ました。

この結果見て「もっと大量に作れば荒稼ぎじゃん」って思う方も多いと思います。

しかし、ワンフェスというイベントでアニメや漫画のキャラクターのフィギュアを売る場合、事前に「当日版権」という許可を取らないと売れないルールになっています。

このルールがあるため、ワンフェスで売られているフィギュアは基本的に、「事前にサイズや販売個数などを決めて版権元に許可を取る手続きを取らなければいけない」という手続きをしてから販売しないといけません。

それがとういうことなのかというと、「試作品の段階で自分の作っているフィギュアがどれぐらいの数がいくつ売れるのかを判断しなければいけない」ということ。

しかも人気なキャラだからと言って売れるわけでもなく「売れるもの売れないもの」の差が結構激しくて、何度か経験している私でも本当に何が売れるか分からないんですよね。

そのためギャンブルに近い感覚で「大博打うって大量に作って売れ残ったり」「控目の量で作ったらそのときに限って大量に売れたり」なんてのがワンフェスでは日常茶飯事なんです。

他にも色んな要因があるんですけど、ここで説明してたらキリがないのでまた別の機会にでも解説したいと思います。まあ色々大変なんですよ(丸投げ

利益

  • 売上        +320,000円
  • 諸費用       -130,716円
  • 製作時間(人件費) プライスレス

純利益 +189,284円

結構いい結果なんじゃないでしょうか。流石に40個のガレージキットを売り切ったのでこれくらいの利益がでてもいいですよね・・・しかも自家複製ですし・・・。

今回のワンフェスで「このサイズで8,000円は安くない?」って結構言われましたが、この値段が実現できるのも40個という販売個数と自家複製による徹底的な節約から来ています。

製作時間(人件費)はプライスレス、とは書きましたが、単純にこの純利益が人件費となる部分でしょう。半年かけて作るので1ヶ月3万円ほどでしょうか。

最後に、純利益は出てしまいましたが原価検証としては少し物足りないので、オマケとして「販売個数20個の場合」と「販売個数80個の場合」と「複製を抜き業者に依頼した場合」についてのフィギュア原価について書いていきたいと思います。

フィギュアの原価計算を色んなシチュエーションで検証

販売個数20個だった場合

計算方法としては単純にレジンの使用量を半分にするだけです。原型製作費や交通費、シリコーン型製作についてのマテリアルは一緒なのでそのままです。

  • 原型製作費 合計17,600円
  • 複製費   合計52,070円
  • 交通費   合計44,000円

合計 113670円

販売数20個→8,000円×20=160,000円

全部売れた時の売上 160,000円

160,000-113,670=46,330円

純利益46,330円

販売個数を半分にしたら純利益がガクッと下がりましたね。でもこの販売個数20個っていうのは、一般ディーラーではけっこう普通な数字です。

そして、諸経費から考えたら最低でも「14個」は売って帰りたいところ。それ以下の販売個数なら赤字です。

販売個数80個の場合

こんなに売れたら最高なのになーーーという夢の販売個数です。

大手ディーラーさんや商業原型師さんならこれくらい売って帰るんじゃないでしょうか?

計算方法としては、シリコーンを「旭化成M8012」から耐久性の高い「ダウ#3498#8000」に変更。レジンの使用量を倍にするという感じです。その他は変わりません。

  • 原型製作費 合計17,600円
  • 複製費   合計113,600円
  • 交通費   合計44,000円

 

合計 175,200円

販売個数80個→8,000円×80=640,000円

全部売れた時の売上 640,000円

640,000-175,200=円

純利益464,800円

こんだけ売上上げてみたいなあああ!!!(夢のようなお話)

ちょっと話変わりますが、ワンフェスの中で行われているWSC(ワンダーショーケース)という企画をご存知でしょうか?

それは「ワンフェス参加者の中から厳選された超絶原型師様のフィギュアを取り上げてWSCの特設会場で再販売する」という内容になっています。

ワンダーショーケースで販売される超絶原型師様のフィギュアでさえ販売個数が”40個”とかなんですよ。売れるのが確実であろうフィギュアでもその程度の個数の販売です。

ここから分かるように販売個数80個と言うのは夢のまた夢の話なんですよね~。

複製を抜き業者に依頼した場合

これ結構気になってる人いるんじゃないでしょうか?私も気になっていたので、原型を見てもらって有名複製業者の、某RCなんたら社さんに簡単な見積もりを出してもらいました。

細かい見積もりを出してもらった上で、「これブログに載せていいです?」って聞いたところ「トラブルの元になるから細かい金額とかは公表しないでボカしてもらえればOKっす。」との事だったので、8,000円のキットを40個販売して売り切ったときの結果だけ言います。

全部のキットを売り切って、20,000円の黒字でした!

簡単に計算して320,000円の売上に対して、費用が300,000円だったという事ですね。

これを見て「たった2万円の売上?」と感じた方も多いはず。ですが、私的には「業者抜きでも利益でるんだ。」と思いました。

複製業者に頼んだ場合は「全部売り切ったら5万円の赤字で済む」という話がザラにあります。販売個数20個で業者抜きなら本当にこんな感じなんでしょう。

業者抜きでちゃんとした売上を出せるようになるには、自分のフィギュアで30万円ほど売れる様になってからという感じですね・・・。

コレを見たら、抜き業者さんに頼んで綺麗なガレージキットを販売しているディーラーさんが、どれだけ頑張ってるかがお分かりいただけると思います。作り手のことを1番に考えてくれてますね。ほんとありがたいことです。

いくつかの場合に分けた「フィギュア1体分の原価」について

最後になります。ここまででいくつかの場合に分けたお金の話をしてきましたが、それを元に「フィギュア1体分の原価」を計算してみます。

計算方法は掛かった費用を販売個数で割って1体分を出しています。

  • 自家複製・販売個数40個 → 3,267円/体
  • 自家複製・販売個数20個 → 5,684円/体
  • 自家複製・販売個数80個 → 2,190円/体
  • 業者複製・販売個数40体 → 7,500円/体

ここから分かるように、ガレージキットの原価は「3割~5割」という事が分かります。業者抜きになると「9割~10割以上」もしくは赤字という感じですね。

今回計算した金額は、あくまでも私が製作したフィギュアでの話になります。パーツ数が多くなったりサイズが大きくなったりすれば、かかる費用は増えますし、逆にパーツ数が少なくなったりサイズが小さいと、費用は少なくなります。

「このくらいのフィギュアでこんだけのお金がかかるのか~」程度の目安として考えて頂ければ幸いです。

あと、自前の電卓でピコピコ手打ちして計算たものなのでどこか間違っているかもしてません。もし間違えを見つけた方いましたら、お問い合わせフォームやTwitterなりで指摘していただけると助かります。

長くなりましたが、以上になります。

それでは。