こんにちは。柚P(@yzphouse)です。
フィギュアやガレージキットを始め、最近ではフレームアームズ・ガールなんかの”美少女系プラモデル”も増えてきましたね。
そういうキットの「目」を塗装するときに必要な「アイペイント」という技術をご存知でしょうか?
すでに瞳が塗装してあるパーツ(例えばFA:Gとか完成品フィギュアとか)でアイペイントをする場合は「アイリペイント」「アイリペ」という呼び方をされてたりもしますね。
塗装を前提として作られているガレージキットでは、必ず「アイペイント」という技術が不可欠になってきます。(最近では瞳デカールを付属してくれるディーラーさんも増えてきましたが。)
そんな「アイペイント」という技術ですが、これがかなり難しく、塗装初心者で何も知識が無いままチャレンジすると、まず上手くは出来ないと思います。ていうか私もそこまで上手ではありません・・・
アイペイントを上手にするためには、面相筆で塗装する技術ももちろん、左右対称なバランスのいい瞳を、いかに「3次元の曲面で作られたパーツに描き込めるか」が重要になってきます。
この「左右のバランスのとり方」や「アイペイントの作業方法」にもちょっとしたコツがあるので、この記事ではそういったポイントなんかも紹介していければと思っております。
目次
フィギュアの目に瞳を書き込む「アイペイント」
アイペイントと一言でいってもやり方は色々あります。
ここで紹介するのはあくまでも私のやり方です。「他の人に聞いたやりかたと全然違うじゃないか!」とかは無しでお願いしますね。
さてさて、それではアイペイントで使用する道具から説明していきましょう。
アイペイントで使用する道具
まずは「面相筆」です。
穂先が細く、先端のまとまりが良い筆を使いましょう。私のおすすめは「文盛堂 ハイセーブル 5/0号」です。
耐久性はそこまで高くないですが、先端のまとまりがとても良く細い線が描きやすいです。あと値段も安いのもいいですね、模型店で300円くらいで買えます。
それからアイペイントで使用する塗料も大切です。
私のやり方では、ラッカー系塗料の上から瞳を描いていくのでラッカー系の塗膜を侵しにくい「エナメル系塗料」を使います。
そしてフィギュアなどの瞳は基本的に「色が鮮やか」なものが多いです。なので純色から調色できるガイアカラーのエナメル塗料を愛用しています。しかも塗料の乾くスピードも早いので使いやすいです。
ガイアのエナメル塗料以外にもアクリル塗料の「リキテックス ソフト」を使うこともあります。
これです。水溶性のアクリル塗料なので扱いも簡単です。
リキテックスは画材用品店や文房具店、東急ハンズなんかで手に入るとおもいます。色によって値段が違ったりするのでよく見て選びましょう。
実際にアイペイントをやってみる。
それでは筆と塗料を用意してアイペイントをやってみましょう。(ここからは画像がとても多くなります。)
まず始めに描く瞳は、少女週末旅行のチトちゃんの目です。
ちなみにコミックでの瞳はこんな感じです。
黒一色でとても簡単そうに見えますが、両目のバランスを取りながら筆で塗装するのは、慣れないと非常に難しいです。
しかし、絵とは違いなにもない真っ白な紙にゼロから描くのとは違います。
瞳を塗るパーツによっては、ある程度の「目のくぼみ」や「アタリ」があります。それを基準に描き込んでいけば失敗しにくいでしょう。
これはラッカー塗料で肌の色を塗った後の顔のパーツ。当たり前ですが瞳は描かれていません。
このパーツでもうっすらと”目のくぼみ”があるのがわかるでしょうか?ここを目印に瞳を描いていきます。
使用する塗料はガイアのエナメル塗料です。ここではダークグレーに調色したものを使いました。
まずは、黒目を塗る部分の中心を決めます。両目で同じ方向を見ているように目線が合うようにしてやりましょう。
その中心の点を目印に黒目のアウトラインを描いてやります。このキャラの場合はまんまるの黒目なので丸を描いてますが、キャラクターによっては楕円だったり、四角っぽかったりするのでこのへんは臨機応変で。
続いて、まつ毛とかがある「アイライン」を描いていきます。
ここも、いきなり左右対称の曲線を引くのは難しいので、仮の点をいくつか描いてアタリをつくっておきます。こうすれば左右対称の線が引きやすいです。
アタリの点が上手に描けなかったら、エナメル溶剤を染み込ませた綿棒で拭き取ってやれば、エナメル塗料だけが拭き取れるのでやり直しができます。
そしたらアタリを目印に1本の線でアイラインを繋げてやります。完全な左右対称ではないですが、1発で描いた線の割には違和感なく描けていると思いませんか?
続けて眉毛のアタリも描いておきます。
眉毛を描きました。とても太いですね。なんだか男らしくなってしまいました。
さて、ある程度の瞳が描けたら、次はアイラインと眉毛の「修正作業」をしていきましょう。
やり方は簡単です。さっきまで使っていた面相筆を綺麗に洗浄してから、そこに「エナメル溶剤」を含ませます。含ませたらキッチンペーパーで軽く余分を吸いとると作業がしやすくなるでしょう。
エナメル溶剤を含ませた面相筆で、アイラインの余計な塗料を溶かして削り取っていきます。
塗料で穂先が汚れてきたら、エナメル溶剤で洗って⇒キッチンペーパーで余分を吸い取って⇒アイラインの修正、の繰り返しです。
塗料を拭き取り過ぎた場合は、再度エナメル塗料を塗ればリカバリーできます。この工程で気が済むまで修正を繰り返しましょう。
修正後です。あの太かった眉毛もアイラインも整いました。これで瞳の塗装は完了です。
ちなみに、ほっぺたにある // のラインも同じやり方で描けます。
まず「このあたりかな」という位置に塗料で線を描きます。
そしたら、先程と同じようにエナメル溶剤を含ませた筆で余分なラインを削り取ったら「ほっぺたの細い線」の出来上がりです。
「エナメル塗料で描き込んで溶剤を含ませた筆で余計な塗料を削る」というのがアイペイントの基本になります。
応用編「ラッカー系クリアー塗料を活用したアイペイント法」
ここまでの内容を読んで「私がやりたいアイペイントはもっと複雑でカラフルでキラキラしたやつなの!!こんなんじゃ参考にならない!!」なんて思った方もいるでしょう。
もちろん紹介しますよ。複雑でキラキラしてるアイペイント。ギャルゲーみたいな瞳を描いてやりますよ。
ここから紹介するアイペイントはさっきのと比べて、もう1段階くらい難しくなります。この記事を読んだからといって同じように出来るとは限りませんが、こういう手順でやってるのかー、という参考程度にしてください。
塗装に入る前の準備
複雑な瞳を描くためには、まず「どんな瞳を描くのかというイメージ」をしっかり固めておきましょう。
瞳を塗装するフィギュアのキャラのイラストを元にしてもいいし、好きなイラストレーターさんの瞳の描き方を真似するのでもいいです。
なぜ「塗装する瞳を、事前に決めておかないといけないのか」という理由ですが
ちょっと難しい図解ですが、瞳の塗料の色ごとに「ラッカー系のクリアー塗料でコーティングしていく」からです。
エナメル塗料で1色塗ったら、その上からラッカークリアーでコーティングして「下の塗料をセーブする」というイメージです。
こうすることで、その上からエナメル塗料を塗ってもラッカークリアーでコーティングされた下の塗料は、侵されて溶け出したりすることが無くなるという訳です。
逆に言えば、一度ラッカークリアーでコーティングしてしまった塗料は、エナメル溶剤では拭き取れなくなってしまい後戻りはできなくなります。
なので塗装前に塗る順番やどんな形で色を乗せていくのかをしっかりと決めておきましょう。
とはいえ、文章で説明してもイマイチわかりにくいと思うので、とりあえず作業工程を見たほうが早いですね。早速塗っていきましょう。
実際にアイペイントをしてみる。
使用するパーツは、saiさん原型の「FGO フランケンシュタイン」です。プロの原型師が作られたガレージキットなので顔の造形もとても細かく綺麗です。
目のくぼみもしっかり入っているので、これを基準に塗装していきましょう。
まずは、白目からです。
ここはガイアのエナメル塗料を使用しています。白のラインがはみ出したり歪んだりしたら、エナメル溶剤を含ませた筆でアウトラインを綺麗に整えてやりましょう。
続いて白目の”影”を描いていきます。
白目の影はアニメイラストでよく見かけるアレです、まぶたの段差から落ちる影を再現した感じなのでしょうか。
使用した色は青よりのライトグレーです。
続けて、白とライトグレーの間に中間色を描いて境界線をぼかしていきます。グラデーションっぽくしていくイメージですね。
アイペイントでグラデーションを作るのにエアブラシを使う方もいるみたいですが、私は瞳周辺をマスキングをするのが苦手なので滅多にやりません・・・
純色のホワイトとライトグレーの混合率をちょっとづつ変えたものを何重にも重ね塗りしてグラデーションっぽくしました。
これで白目の塗装は完了です。
この部分はこれ以上いじることはないので、ラッカークリアーをエアブラシで塗装してセーブしておきましょう。
白目だけなので史◯最強の弟子ケ◯イチみたいですね
ラッカークリアーで保護するのはエナメル塗料を塗った白目の部分だけにしましょう。
パーツ全体に塗装しても特に意味は無いです。塗膜が余計に厚くなるだけです。
あと、ラッカークリアーの吹きすぎでエナメル塗料を溶かさないように注意してください。せっかく綺麗に塗った部分が溶けて台無しになったら肌色を塗装するところからやり直しなので・・・
ラッカークリアが乾燥したら次は「アイライン」を描いていきます。
アイラインにも深みを出していきたいので、2色ほど使って塗っていきましょう。
1色目は「オレンジ」です。使用した塗料はリキテックスです。
アイラインの描き方は先程と同じように「左右対称のアタリの点をとったあとにメインの線を描く。」というやり方でもいいですね。はみ出したラインはリキテックスの溶剤を含ませた筆で整えてやりましょう。
ちなみに、白目の塗装は上からラッカークリアーでコーティングしてあるので、リキテックスの溶剤やエナメル溶剤を含ませた筆でなでても溶け出してくることは無いので安心して作業しましょう。
なぜアイラインをだけリキテックスを使っているのか?というのも説明しておきましょう。
リキテックスの良いところは色以外の特性で「不透明」や「半透明」「透明」といった「下地の透け具合」が選べるという点からです。
「透明」のオレンジ色を使えば、下地の色を生かしながらオレンジ色を塗ることが出来ます。さらに透明なので塗り重ねる回数が増えるほど色が濃く出来たりもします。
この特性を生かしながらオレンジの上から、半透明のブラウン系を塗り重ねることでさらに深みが出ます。
アイラインのフチにオレンジが少し残るように塗ってやれば、グラデーションがかかっているようにも見えますね。
デジタル用語で言うところのアンチエイリアスみたいな感じでしょうか、境界線が微妙にボケて透明感が出るような気がします。
アイラインが綺麗に描けたら、また同じようにラッカークリアーでコーティングしてやりましょう。
ラッカークリアーが乾燥したら次は瞳の中に色を付けていきます。
いきなりですが、2色の青色で大まかな色を塗りました。使用した塗料はガイアのエナメル塗料です。
ここからは、塗装する前に紙に描いたアイペイントのイメージイラストを参考に色を塗っていきます。
この青色の2色をベースに中間色をたくさん作ります。
中間色は塗料皿に1色づつ丁寧につくるのではなく、写真のようにパレットの平たい部分で使う量だけ少しずつ調色していけば捗ります。
中間色を作ったら、白目と同じような要領でグラデーションを作っていきます。
グラデーションができたら、濃い青と同じ色で瞳孔の”( )”のラインを描きます。
少しづつ瞳っぽくなってきました。
光の強く当たる下側の部分に「虹彩」の模様を描きます。虹彩の線を意識して明るいハイライトをちょんちょんと入れます。
続いて「角膜」のツヤを描き込みます。かなり薄く希釈したエナメルのホワイトを使って瞳の上部にクラゲみたいなハイライトを描きます。コツとしては「フチだけにホワイトを発色させるようにする」です。
このハイライトは全体で見たときの主張は弱いものの、瞳全体の「潤い感」が強く出てくれるので私はよくやります。
慣れないとかなり難しいので、1発で出来そうにないという方は、この塗装の前にラッカークリアーでコーティングしてから失敗しても修正できるようにしてから挑戦してみましょう。
最後は純色のホワイトでハイライトを描き込んで完成です。
「筆で綺麗な丸の点を描くのが難しい」という場合は、画材用品のドットペンがおすすめです。最近では100円ショップなんかでも手に入ります。ネイルコーナーに置いてありますね。
アイペイント終了
最後はつや消しのトップコートを塗装するなりして仕上げて完成です。
色ごとに工程を分けて「ラッカークリアーでコーティングしながら塗り重ねていく」というアイペイントの方法でした。
おわりに
ガレージキットやフィギュアの製作で一番難しい壁が、この「アイペイント」だと思います。
そもそも、やりかたが分からないだとか、やりかたは知ってるけど上手く出来ない、という方が多いと思います。
始めは誰だってバランスよく左右対称に瞳を描くのは苦手だと思います。しかし、「点でアタリを作ったり」「溶剤を含ませた筆でアウトラインを整える」など瞳を上手に描くためのコツはあります。
ここまでで紹介したコツ以外にも「利き手じゃないほうの瞳から先に描く」なんてのもありますね。ちなみにこれは本職のイラストレーターさんから教えてもらったコツです。
右利きの人は左目から描くという感じです。
右目から先に描いて、右目のバランスを見ながら左目を書こうとしても「筆を持っている手で右目が隠れて見えない」という問題があったり、そもそも利き手側じゃないほうの目は描きにくいので難しいほうから先に描いておく、などの理由があるようです。
このように、慣れや技術以外にも、作業手順やちょっとしたコツを知っておくだけでもアイペイントがいつもより綺麗に出来るかもしれません。
フィギュア以外でも、フレームアームズ・ガールを始めとする美少女系プラモデルを専門にしているモデラーさんでも、アイペイントが出来るようになればオリジナルのフェイスパーツが作れるようになり、周りとは一味違う作品が生み出せると思います。
是非この記事を参考にアイペイントにチャレンジしてみてください。
それでは。
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