こんにちは、柚Pです。
この記事ではCHITUBOXの「印刷設定」について詳しく説明してきます。
目次
印刷設定についての解説
CHITUBOXの[設定]の画面の[印刷]の欄より、レジン毎にパラメーターの調整をすることができます。
左項目の解説
左側は「どんなレジンを使っているのか?」で数値の調整する項目が多いですね。
また「露光時間」「レイヤーの高さ」「リトラクト後の待機時間」など、出力品の仕上がりに直接関係してくるので、各項目に入力されている数値にどんな意味があるのか、しっかり理解しておきましょう!
レイヤーの高さ
出力品を何ミリで積層して出力するのかを決める数値です。
■数値が小さいと(例:0.02mm)
- Z方向の積層ピッチが細かくなり積層痕が目立たなくなる
- 出力時間が大幅に延びる
- 出力難易度が上がる
■数値が大きいと(例:0.1mm)
- Z方向の積層ピッチが大きくなり積層痕が目立つ
- 出力時間が短くなる
一般的に使われてる数値は「0.05mm」ですので、特にこだわりが無ければ0.05mm固定でいいでしょう。
3Dプリンターの出力作業に慣れてきた方は、シチュエーションや用途に合わせて0.02~0.10mmくらいの範囲で調整してみるものいいかもしれません。
初期層の数
プラットフォームに出力品を定着させるための「初期層」の積層数を何枚にするか、という数値です。
この数値は「1~5」の範囲で設定してやるとよいでしょう。
初期層の数値を極端に多くしすぎると、無駄に印刷時間が長くなったり、プラットフォームから出力品が剥がれにくくなったり、ラフトが割れやすくなる原因にもなるので注意しましょう。
また「初期層」は通常のレイヤー層とは別枠で露光設定ができるようになっています→「初期層の露光時間」
露光時間
通常のレイヤー層の露光時間(UVライトを何秒照射するか)を設定できます。
ここに入力する露光時間は、使用するレジンの種類やプリンターの機種によって大きく変化してきますので、レジン販売元のホームページやパッケージを参考に設定してみましょう。
慣れてくれば、各メーカーが無料で配布してくれている「テストプリント用モデル」を印刷して、自分で適正な露光時間を探ることもできます。
初期層の露光時間
プラットフォームに出力品を定着させるための「初期層」に何秒UVライトを照射させるか、という数値です。
こちらもレジンの種類、3Dプリンターの性能、プラットフォームの表面処理具合などによって数値が大きく変わってきます。
基本的には「30.0~60.0s」くらいの範囲で設定してやります。
出力中はプラットフォームと出力品が剥離しない程度にしっかり結合していて、出力後はスクレーパーを使ってストレスなくプラットフォームと出力品が剥がせる。という丁度いい具合を目指してみるといいですね。
遷移レイヤーの数
初期層の印刷が終わり、通常のレイヤー層の露光時間に遷移するときのレイヤー数です。
設定数は「0~10」くらいの範囲で設定してやります。遷移レイヤーを使用したくない場合は0を入力してください。
遷移レイヤーの具体的な動きについてですが、ちょっと言葉で説明するには難しいので、例えばの話をしてみます。
例えば、印刷設定の入力値を、
- 初期層の露光時間 [30.0s]
- 露光時間 [2.0s]
- 遷移レイヤー [6]
と入力したならば、「遷移時間の減少」の数値が自動で設定されます。この場合、遷移レイヤーの減少時間は「-4.0s」となりますので、
- 初期層 30.0s
- 遷移レイヤー層 26.0s
- 遷移レイヤー層 22.0s
- 遷移レイヤー層 18.0s
- 遷移レイヤー層 14.0s
- 遷移レイヤー層 10.0s
- 遷移レイヤー層 6.0s
- 通常レイヤー層 2.0s
という動きになります。
6枚と設定した遷移レイヤーに合わせて、露光時間が4秒ずつ減少しながら通常レイヤーの露光時間にじわじわ遷移してくれるんですね。
遷移レイヤーの設定をすることで、露光時間の長い「初期層」から露光時間が極端に短くなる「通常のレイヤー層」の遷移時に「うまく定着しなかった」といったトラブルを少なくすることができます。
ちなみに遷移レイヤーは通常レイヤーと同じ扱いになっているので、「リフト高さ」「上昇速度」「リトラクト距離」「リトラクト速度」の数値に依存して動くので注意しましょう。
マシンの種類
デフォルトのままでいいです。
遷移時間の減少
- 露光時間
- 初期層の露光時間
- 遷移レイヤーの数
ここに入力した数値を元に、計算された値が自動で入力されます。
プリント中の待機モード
「待機時間」と「消灯遅延」が選べますが、基本的には「待機時間」の設定のままでいいです。
ちなみに「消灯遅延」の設定では、プラットフォームが移動している間の時間も加味しながらUVライトの照射タイミングを調整する上級者向けの設定です。詳しくはSK本舗の公式ページで解説されています。
ちょっと前までは「消灯遅延」でしかUVライトの照射タイミングの調整ができなかったので渋々使っていましたが、今は「待機時間」という便利な設定方法が追加されているのでそちらを使いましょう。
リフト前の待機時間
UV照射が終了してから上昇するタイミングで何秒待つかという数値です。
私は「0.5s~2.0s」くらいで設定しています。
この数字を極端に短くすると、UVライトが消灯してもまだ化学反応が終わりきってないレジンをフィルムから無理やり剥がすような感じになるので、あまり気持ちよくありません。
とはいえ私の経験では、短くしたところでそんなに大きな影響が出たこともないので、いつも0.5sくらいで設定しています。
リフト後の待機時間
プラットフォームが一番上に上昇し、これから降下しようか、というタイミングで何秒待つかという数値です。
私は「0.5~1.0s」くらいで設定しています。
「リフト高さ」を高めに設定することでリフト後にレジンプールから出力品が出る状態にし、「リフト後の待機時間」を長め設定することで、半硬化レジンを重力で流すしてエッジのきいたモデルを出力する。みたいなときに調整します私は。
恥ずかしながら、ここの項目はそれ以外の活用法を知らないので、いつも0.5sくらいで適当に設定しちゃってます。
リトラクト後の待機時間
プラットフォームが一番下まで降下してUVライトを照射する前に何秒待機するかという数値です。
リトラクト後、プラットフォーム(もしくは出力品)とフィルムの間は、「レイヤーの高さ」で設定した数値まで急接近しています。
その隙間は「レイヤーの高」さで設定した数値、例えば0.05mmとかになるので、ほぼ髪の毛の細さくらいの本当に極薄の隙間なんですよね。
印刷中は、その小さな隙間に未硬化の液状レジンが入り込んでいるわけですが、レジンはリトラクト中のプラットフォーム(もしくは出力品)とフィルムで挟まれる際、0.05mmの隙間に入りきれないレジンはプラットフォームの無い外側へ逃げだそうと外側へ流れる動きをはじめます。
そして、このようにレジンがまだ流れ動いている最中にも関わらず強引にUVライトを照射してレジンの硬化をはじめてしまうと、出力品の表面が荒れたり、レジンが正常に硬化しなかったなどの印刷トラブルに繋がってきます。
正常なモデルを出力するためには、レジンが動いてない状態でUVライトの照射をする必要があるわけです。
「リトラクト後の待機時間」は、レジンの流れる動きが止まるまでUVライトの照射を待たせる機能と覚えておきましょう。
待機時間の決め方ですが、私はレジンの粘度によって変更するようにしています。
一般的な粘度のレジンだと「1.0~2.0s」、高粘度のレジンだと「3.0~6.0s」、低粘度のレジンだと「0.5~1.0s」くらいで設定します。
右項目の解説
右側の項目では主に「Z軸の動き」についての設定ができます。
移動距離と移動速度を適正化して、効率よく印刷を進められる設定を作ってみましょう!
初期層リフト距離
初期層印刷時のプラットフォームが上昇する距離を指定できます。
私がよく使っている設定は【[3.000]+[4.000]mm】です。
ちなみにこの記事で貼っている印刷設定の画像では【[4.000]+[3.000]mm】と入力されていますね。この場合は、4と3を足した【 7mm 】上昇するということになります。
ではなぜ右と左で別々に入力できるようになっているのか?という話になりますよね。これは、二段階で上昇距離を指定することで、上昇速度も二段階で指定できるようにするためです。
後述する「初期層上昇速度」の欄にも速度の数値を入力できる欄が2箇所あります。
この機能をうまく使えば、
はじめの4mmはゆっくり持ち上げることで出力品とフィルムを剥離させ、剥離させたあとはさらに早い速度で上昇させる。なんて動きができます。
ちなみに別に2段階で動かなくてもいいという方は、左側の欄だけ数値を指定してやり、右側には「0」と入力するとシンプルな動きで運用することができます。
リフト高さ
通常のレイヤー層印刷時のプラットフォームが上昇する距離を指定できます。
私がよく使っている設定は【[2.000]+[5.000]mm】です。
こちらも「初期層リフト距離」で解説した内容と同じく、2段階に分けて上昇距離を指定することができます。
底部退避距離
初期層印刷時のプラットフォームが降下するときの距離を指定できます。
私がよく使っている設定は【[自動入力]+[1.000]mm】です。
入力できる欄は右側のみで、左側の欄にはソフトが計算してくれた値が自動入力されます。
こちらも二段階でスピードの設定をすることができます。
リトラクト距離
通常レイヤー層印刷時のプラットフォームが降下するときの距離を指定できます。
私がよく使っている設定は【[自動入力]+[1.000]mm】です。
こちらも「底部退避距離」で解説した内容と同じく、2段階に分けて降下距離を指定することができます。
初期層上昇速度
初期層印刷時のプラットフォームが上昇する速度を指定することができます。
私がよく使っている設定は【[80.000]&[200.000]mm/min】です。
「初期層リフト距離」で高さの数値を二段階で指定している場合は、上昇速度も2段階で設定できるようになります。
上昇速度
通常のレイヤー層印刷時のプラットフォームが上昇する速度を指定することができます。
私がよく使っている設定は【[80.000]&[200.000]mm/min】です。
「リフト高さ」で高さの数値を二段階で指定している場合は、上昇速度も2段階で設定できるようになります。
ボトムリトラクト速度
初期層のプラットフォームが降下しり速度を指定することができます。
私がよく使っている設定は【[200.000]&[80.000]mm/min】です。
「底部退避距離」で高さの数値を指定している場合は、上昇速度も2段階で設定できるようになります。
リトラクト速度
通常レイヤーのプラットフォームが降下する速度を指定することができます。
私がよく使っている設定は【[200.000]&[80.000]mm/min】です。
「リトラクト距離」で高さの数値を指定している場合は、上昇速度も2段階で設定できるようになります。
動画で解説
ぶっちゃけ文字と画像で解説されても分かりにくいですよね。この記事を書いてる私ですらちゃんと伝えられてるか不安なレベルで複雑で分かりにくいです。
というわけでプリンターが実際に動いてる映像で解説した動画を作ってみました。
まとめ
CHITUBOXの印刷設定は一度理解してしまえば簡単に使いこなせるのですが、覚えるまでが大変なんですよね・・・数字ばっかりで何が何やら。
たまにしか3Dプリンターを触らないような方だと、1度覚えたとしても時間が経つとCHITUBOXの使い方を忘れちゃったなんて場合もあるでしょう。
まだCHITUBOXに慣れてない初心者の方はもちろん、一度覚えたけど忘れてしまったという方にも役に立つ記事になってれば幸いです。
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